†日常の中の非日常†





一緒におしゃべりして、
一緒に笑いあって…
ただ、それだけでとても楽しかった
ただ、側にいたかっただけ…



†日常の中の非日常†



「黒羽」
「よっ、工藤」

学校の帰りに待ち合わせして一緒に帰る。
ここ1ヶ月の日課だった。
空には雲一つない蒼い空。
そういえば、出逢った日もこんな抜けるように綺麗な蒼空だったなと思う。
あれは、街中のことだった。
いつも通りに友達と帰っている途中の交差点。
絵に描いたような平和な日常に、それを壊す叫び声が上がった。

「きゃぁぁぁぁっっっ――――!!!!」

ざわざわと辺りが騒がしくなる。
なんだなんだと野次馬が集まる。

「誰か。ひったくりよ。捕まえて!!」

誰もが慌てて身を引く中、ひったくり犯はあろうことか快斗たちの方へ逃げてくる。

「なぁ、なんかヤバくない?」
「に、逃げようぜ」
「…………」

友達が焦って逃げようと言うのに冷めた目を向け快斗はひったくり犯を黙って見つめた。
快斗はこういう弱い者から物を盗んだりして笑っている者が大嫌いだった。
特に殺人など論外。
最低最悪な行為だと思う。
快斗自身が――犯罪者だから…。

「どけどけ――――っっ!!」

バタフライナイフを持って突進してくる男――ひったくり犯を快斗は避けてナイフを手刀で落として腹に膝蹴りを喰らわせる。
倒れた男からひったくられたバックを取り返して。
そうして気絶した男に冷たい瞳を向けていると、快斗の元にひったくり犯を追って来た学生服の少年がやって来た。

「こいつ、お前が…やったのか?」
「……ぁっ、あぁ…」

驚いた。
そこにいたのは「日本警察の救世主」、「平成のシャーロック・ホームズ」と名高い高校生探偵工藤新一の姿があった。
随分走ったのか息を切らしている。

「わりぃけど事情聴取あるから残ってもらえるか?」
「快斗、大丈夫か!?」
「おい、黒羽」

答える前に避難してた友達が駆け寄って来た。

「平気だよ」
「って、もしかして工藤新一!?」
「ま、マジで!?」
「悪いけど、黒羽君?借りていいかな」

馴れているのか新一は快斗の友達を軽くあしらっている。
皮肉なもんだな…。
探偵と怪盗がこうして出逢うなんて…。
元の姿に戻ったことは知ってたのに…。
ぼんやりと考えている間に、快斗は新一に借されることになっていた。
その後、ひったくりにあった人に感謝されたり、警察の人に怒られたりいろいろあったけど、一番は新一と友達になったこと。
「お前無茶するな」って工藤にだけは言われたくなかった。
大概新一の方が無茶してるだろう。
結局のところ五十歩百歩ということだ。

「おい、黒羽。聞いてんのか?」
「わりぃわりぃ。聞いてなかった」
「お前な…」
「ちょっ、たんまたんま。俺が悪かった。考え事してて…」

新一が右足を振り上げるのに快斗は顔面を蒼白にした。
新一の黄金の右足の力は知っている。
そんな凶器を人に向けないで欲しい。
「たくっ、仕方ねえな」
「で、なに?」

今はこうやって笑いあっていられる日々を続けていけたらいい。









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