†嘘と真実の狭間†





今日は君と出逢った特別な日だから、
君と共にあの場所で過ごしたいんだ…
君と出逢えた奇跡に
たくさんのありがとうを…



†嘘と真実の狭間†



KIDから予告状が来た。
俺だけに届いた特別な予告状。
そこに記された日時と場所に新一は笑みを浮かべ、喜びを覚えた。
あいつが覚えていてくれた証だから…。
そうして一日はあっという間に過ぎ、予告時間になった。
今、思い出の場所――杯戸シティホテルの屋上――にいる。「新一」
「…………快斗!?」

驚いた。
扉を開けて入って来たのは、快斗だった。
新一はてっきりKIDが来るものと思っていた。
快斗がイタズラっぽい顔をして笑った。

「驚いた?」
「ああ。KIDが来ると思ってた」
「初めはね。そのつもりだったんだ」
「じゃあ、なんで…」

KIDの姿で来なかったんだ?
言葉は声にならず口の中で消えた。
快斗は照れたように新一に理由を話した。

「だって、初めて逢った時はお互い偽りの姿だったでしょ?」
「そうだな…」

あの時のことを思い出して苦笑いが込み上げる。

「だからさ、丁度一年経った今日は本当の姿で2人で過ごしたかったんだ」
「――快斗…」
「思えば出逢いは最悪だったよな。俺は探偵が嫌いだったし」
「なっ……どういうことだよ!?」

新一は快斗の言葉が聞き捨てならなくて、快斗に詰め寄った。
快斗は慌てて弁解する。

「だっ、だから、俺の探偵のイメージは白馬みたいに鼻持ちならなくて自意識過剰で人のプライバシーに土足で踏み込む最低な奴だって思ってたんだ」
「お前、だからあの時芸術家と批評家なんて皮肉な言葉残して行ったのか?」「だって、前に青子が俺に似てるって新一の記事見せてくれた時、新聞に笑って写ってる姿が白馬と同じに見えて腹が立って…」
「あの時は確かに調子に乗ってたからな…。そう思われても仕方ねえよ…」

密かに「白馬殺す」と思いながら、新一は自嘲気味に笑った。
でも、と快斗はそれに首を横に振った。

「でもね。沢山の事件を共に解決していくうちに新一は違うんだなって思ったんだ。新一はちゃんと探偵なんだって。だから、新一は俺が認めた唯一の名探偵なんだよ」
「――快斗……サンキュ…」

そうして2人で笑って、顔を寄せ合ってキスをした。
嘘を許される日に偽りの姿で出逢った2人。
今日は、真実を言えることを喜ぶ記念すべき日だから。
――実は、初めて逢った時にお互いの瞳と存在に惹かれていたというのは内緒である…。







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