†ひとりじゃない†





俺がいることでみんなが狙われるなら、
俺がいなくなればいいと思った…
だって、そうだろ?
それが、一番簡単な解決法だから…



†ひとりじゃない†



快斗は朦朧とした意識で左手を上げようとして肩に鋭い痛みが走って止める。
どっと冷や汗が吹き出してきた。
今は、麻酔が効いているみたいだが、直ぐに切れるだろう…。
そうして、こうなった原因のことを考えた。
ユダに素顔を見られてしまった。
もう、このまま生活を続けていくのは危険だし、周りを巻き込んでしまう。
今のうちに姿を消してしまえば、もう誰も傷つけずに済む。
新一、哀ちゃん、みんなごめんね…。
それがいいだろうとゆっくりと起き上がって、周りを見てみる。
どうやら快斗が寝ていたのは阿笠邸の地下室のようだった。
快斗は、そっと部屋にあるパソコンの電源を入れた。
自分が作ったシステムに繋げる。
エンターを押せば、全てが終わるという時に、地下室に誰かが駆け降りてくる音がした。
快斗は緩慢に振り返った。

「黒羽君!!!!」
「……哀、ちゃん?」

哀のすごい剣幕に快斗はびっくりしてただ目をしぱしぱと開けたり閉めたりした。
哀は快斗が今していたことをパソコンの画面で知ると、つかつかと快斗に近づいてパンッと頬を叩いた。
快斗は目を見開いて、叩かれた頬を手で押さえながら呆然と哀を見つめた。
哀は瞳に涙を溜めて快斗を睨みつける。
後から入って来た新一と博士と寺井もそれをただ見守った。

「馬鹿じゃないの。なんでこんな勝手なことするの?あなたには、私たちの想いが伝わってなかったの。私はあなたに助けてもらえて嬉しかった。だから、今度は私が助けてあげたいって思ったの。それなのに、あなたがいないんだったら何もできないじゃない!!なんであなたは人を頼ろうとしないのよ!!」「哀ちゃん…、俺は…」
「少しは人を――周りの人を頼りなさいよ。あなたが私に教えてくれたんじゃない。頼っていいんだよって。我が儘言っていいんだよって…。あなただって――」
「もういいよ。哀ちゃんごめんね。もうこんなことしないから…」

声を詰まらせた哀に、快斗は肩に手を置いて優しい紫暗の瞳を向けた。
快斗が自分の存在自体を消すのを止めた瞬間だった。
新一が快斗と哀に近寄って2人を抱きしめるように肩に手を回した。
新一の蒼い双眸が2人を映す。

「快斗、もう絶対こんなことはするなよ。お前はひとりじゃないんだから」
「……努力します」
「約束しろ。それと、このシステムは破棄しろよ。他のシステムは俺たちにも使えるようにしてくれ」
「ぇっ……それは…。システムはいいけど…」

蒼と紫暗の双眸が無言で見つめあって、結局勝負はつかなかった。
それでも、明確な確約は出来ないけど、ひとりじゃないって思えるから。
みんながいれば、立ち向かっていける…。







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