†そばにいさせて†





何もできない自分が不甲斐なくて、
頼ってくれないことが哀しい…
もっと俺たちを頼ってくれ…
お前は、ひとりじゃないから…



†そばにいさせて†



ユダとの対峙の後、寺井と博士と哀が駆けつけて来た。
直ぐに阿笠邸の地下室に移動して怪我の手当てを哀がした。
快斗が自分でしようとするのに強い麻酔(快斗は薬に耐性があるから)を打って無理矢理眠らせて治療した。
漸く一段落ついてゆっくり上下する快斗の胸を見ていた。新一は、側にいたのに何もできなかった自分に腹が立っていた。
黒の組織とも戦って来たのに、快斗は自分たちのことを助けてくれたのに、自分は何も返してやれてない。
助けてやることもできなかった。
逆に人質に捕られて快斗を追い詰めた。
それが、悔しくて哀しかった。
そこに、寺井がやって来て話があるから来て欲しいと言われ、首を傾げながら一緒に向かった。
そこには一台のパソコンが置いてあった。
新一と哀が?を浮かべていると、寺井がパソコンの画面を示した。

「これは、快斗坊ちゃまのデータです」
「これがどうかしたんですか?」
「このエンターキーを押せば快斗坊ちゃまの存在自体が消滅します」
「なんでそんなもの…」
「寺井さん。何故そんなものが残ってるんですか?」

寺井が淡々と事実を言うのに、新一が文句を言おうとして哀に遮られた。
ひやりとした空気が流れた。
哀が珍しく怒っているのを感じて新一は口を噤み、寺井が話続けた。

「消せないんですよ」
「「消せない?」」
「このシステムは坊ちゃまが頭脳の全てを使って作ったものです。優作様にも頼みましたが、無理でした」新一と哀が試しに消そうと試みてみたが、全力でやっても消すことはできなかった。
これのキーが押されれば、快斗の存在は消えてしまうのだ。
それだけはなんとしても止めなければならないと思った。

「今回あったことから考えますと、坊ちゃまはこれを使うことを選択なさるでしょう」
「ふざけんなよ!!そんなの…」

自分ひとりで勝手に決めて、そんなの納得できるかよ。
激情のままに机を殴ると、哀が低く呟いた。

「ふざけるんじゃないわよ。自分だけ…」

哀の激昂に新一も寺井も博士も縮こまった。
哀は立ち上がって階段を駆け降りて快斗の元へ向かった。
もう起きているだろう快斗に話を聞く為に…。







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