†パンドラの瞳†





今度こそ、全てを終わらせる為に…
戦いを始めよう…
でもね、なんでかな?
俺はもう、
誰かが傷つくのを見たくないんだ…



†パンドラの瞳†



今日もまたKIDの予告日が来た。
快斗は嫌な予感を感じながらも、敵の組織を欺く為に、今日もKIDの衣装を纏った。
快斗たちは、初代KIDを殺した組織を潰す為に本格的に動き出した。
その水面下の行動を悟らせない為にも、KIDという囮は必要なのだ。
本当は、新一や哀ちゃん、優作さんたちを巻き込みたくなかった…。
でも、「巻き込みたくない」という言葉に、彼らは断固として首を縦には振ってくれなかった。
だから、取り敢えずは一緒に組織と戦うという形で纏まった。
まだ快斗は諦めていないが…。
盗ってきた宝石を月に翳す。
この行為にもう意味なんてないのに…。
不意に人が出て来てKIDに話しかけた。

「大丈夫だったのか?」
「名探偵…。はい、無事に終わりました」

出てきたのは、新一だった。
KIDは、獲物の宝石を新一に渡した。

「どうして此方にいらしたんですか?」
「なんだか、胸騒ぎがしたんだ…」
「奇遇ですね。私も……」

その瞬間、殺気を感じた。
考えるよりも前に体が動く。
一瞬前にKIDがいた場所に、銃弾が掠めていった。
新一が叫ぶ声が聞こえる。
KIDは弾の軌道を見て、弾が放たれた場所に目を移した。
そこには銃を構えた大柄の男がいた。
全身黒尽くめで黒いニット帽を被り、瞳はアイスグリーン。

「ユダ……」
「なっ……」

KIDが呟いた名前に、新一は驚いた。
世界最高峰のスナイパーと呼ばれる国際犯罪者番号2843号――通称ユダ。そんな有名で凶悪な殺し屋にKIDが狙われるなんて思わなかった。
凄まじいプレッシャーを感じて新一は硬直した。

「――知っていたのか。流石だな、怪盗KID」
「ええ、あなたが日本に入ったという情報が流れていましたから」

ポーカーフェイスを保ちながら、内心殺気に冷や汗が流れる。
とにかく一刻も早くこの場所から離れなければ。
その考えを読んだのかユダが銃口を新一に向けながら言った。

「変な真似はするなよ。こいつが死んでもいいなら別だがな」
「……止めて下さい。名探偵は関係ありません」
「キッ……」

目で黙っていろとKIDに合図された。
新一が悔しそうに口を噛み締める中、ユダがKIDに近づいて、シルクハットを取り払った。
快斗の顔が露わになる。

「なんだ、まだ子供か…」

ユダは、KIDの肩に銃口を押し付けて撃ち抜いた。
ぽたぽたと血が滴り落ち、KIDは激痛と苦鳴を押し殺し、新一が悲鳴を上げた。

「……ッ…」
「KID!!」
「ほう、よく耐えたな…」

ユダは徐にKIDの頭を掴んで顔を上げさせ、瞳の色を見て一瞬止まった。
さっきまで紫暗だった双眸が月の光を受けて赤い光を放つのを見ながら、ユダはKIDの唇に唇を重ねた。
痛みにKIDの秀麗な顔が歪む。

「……んっ……」
「今度会う時は殺してやるよ。KID」
「遠慮、します…」

ばっと離れるとユダは闇に溶けて消えた。
新一が膝を折った快斗に駆け寄ると、肩から血が溢れていた。
また何もできなかったと新一は悔しさを堪え、傷口の止血をした。
哀に連絡すると、すぐ迎えに来てくれると言ってくれた。
待ってる間に不意に快斗の唇に目がいった。
快斗とユダのキスシーンが頭の中に蘇って苛立ちを覚え、新一は不意に快斗の唇を無理矢理塞いだ。
新一が舌を絡めて唇を貪ると快斗も応えてくれた。
つと唇が離れるのを惜しむように銀糸が繋がり切れる。

「快斗。好きだ…。好きなんだ…」
「俺も好きだよ。新一」

2人は思いを伝えたあうように抱きしめあい、もう一度キスをした…。







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