†真実の欠片†





今の関係が、凄く苦しい…
俺が望んだことなのに、
溢れ出してしまった想いが怖いんだ…
逃げて、ごめんね…



†真実の欠片†



あれから、何度かKIDの仕事があったけれど、半分は事件で、半分はKID自身に逃げられて何も進展しないまま日々が遅々として過ぎていく。
哀と協力して調べてみても、KIDを狙っている組織があるらしいということしか分からなかった。
そんな焦りの気持ちが滲む中、またKIDの予告日が来てしまった。
そして、今対峙しているのだが、今日もKIDは宝石を月に翳している。
今日の獲物は大粒のスタールビー。
やっぱり今日もダメだったらしい。
一瞬だけ、落胆したような気がしたから。
直ぐにポーカーフェイスで隠れてしまったが。

「名探偵。宝石の返却をお願いできますか?」
「ああ……」

宝石を受け取ってハンカチーフに包みながら、新一はKIDに問いかけた。

「なあ、KID。……お前、何探してんだ?」
「――どうして探し物をしているとお思いで」
「毎回宝石を返すことと、お前いつも宝石を月に翳すだろ?何かを探してるとしか思えねーよ」
「愉快犯だとは思わないんですか?」
「お前は、人を傷つけて楽しむやつじゃないだろ?少なくとも、俺は――俺たちはそうは思ってない」

真っ直ぐな蒼い瞳で強く見つめられて、KIDは内心苦笑を零した。
――その気持ちだけで、充分だよ。
温かい気持ちになったから、それだけでもういいと思った。
だから、少しだけ周りへの注意を怠ってしまった。
気づいた時にはレーザーポインタの赤い光が新一に向かって延びていた。

「危ない!!」過去の映像がフラッシュバックする。
何とか新一は銃の射程圏から逃がしたが、流石に自分までは無理だった。
それでも、比較的被害が少ないように身を捻った。
脇腹に衝撃が走る。

「キッ……」

シルクハットがころころと転がって行く。
そこにあったのは、クセの強い奔放に跳ねた髪に紫暗の瞳。

「…ッくろ、ば……」
「……………」

ああ、もう終わりだなと思って目を閉じた。
とうとうバレてしまった。
ごめんね…、軽蔑したよね。
友達面して側にいた俺に…。
だから、もう終わり。
痛む脇腹を押さえて、シルクハットを被り直した。
どうやら、もう狙撃はないらしい。

「――ごめんな…。――さよなら…」

笑顔でお別れの言葉を…。
――なぁ、ちゃんと笑えてた?
何ひとつ真実を言わない俺のことなんて許さないで…。
嫌いになってくれればいい…。
さよなら、大好きな人…。







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