「じゃあ、行くか…」
暫く快斗の頭を優しく撫でていた新一は、これからのことを考えながら呟いた。
きっと、“キッド”は訳有りだ。
あんな地下牢に閉じ込められていた時点で既に“普通”とはかけ離れている。
だから、新一が真っ先に考えたのは、快斗の隠し場所。
明らかに“偽名”とわかる名を告げられたときから、何か“本名”を言えない理由があるのだと新一は悟っていた。
だから、快斗の次の反応に驚いた。
「…………行くって、どこへ?」
本心から何を言ってるのかという快斗の反応に、新一はキッドの戸惑いを捉えた。
キッドは、あの場所から出たいとは思っていても、本当にあの場所から出られるとは思っていなかったのだ。
それを、雄弁に表す言葉を快斗は口にした。
「おれ、あそこに戻らなきゃ…」
何もかも諦めたような儚い笑みが、夕陽に照らされて切なく瞬いた。
夕陽に、瞳をやられたかのように細められた紫。
快斗が、こんな広いところへ出たのは初めてなのだと、新一に雄弁に教えてくれた。
日光に照らされたことすらなかったのだろう。
新一自身、周りからよく肌が白いと言われるが、キッドはそれ以上に白かった。
本当に、病的なほど――。
「なん、で……。あんなに、出たがってたじゃないか……?」
押し殺した新一の声に、快斗は淡く微笑した。
困ったような表情に、新一も言葉に詰まる。
「だって、おれがいなくなったら――哀ちゃんと風音に迷惑掛けちゃうから…」
だから、帰ろう――。
そう言う快斗に、新一の体躯が咄嗟に動いた。
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ちょっと快(→?)←新っぽい。
快斗は人を好きになるって感情をまだ知らないからね!
とりあえず新一にリードをお願いします(笑)
2011/11/06 23:26