開かれた扉から最初に見えたのは、燃えるように熱いのに、どこか温かさを感じる優しい橙色の夕焼け。
太陽とは、こんなに綺麗なものだったんだ。
初めてみる光の眩しさへの感動の中に、ほんの少し混じった嬉しさを堪えて表情をくしゃりと歪ませる。
快斗がここに連れ去られた日。
快斗はまだ赤ん坊で。
太陽や風や木々の囁きさえ知らなくて、ずっと外の世界に憧れていた。
志保や紅子に強請って、たくさん話を聞いて、たくさん写真を見せて貰った。
綺麗で。
広い世界に――快斗はずっと憧れていたのだ。
「“キッド”……?」
立ち止まった快斗に、不思議そうに首を傾げる新一に『何でもない』と返して、快斗は新一を真っ直ぐに見詰めた。
一目でも外の世界を見せてくれた優しい“彼”。
新一に、相応しい名は――。
「ありがとう、“コナン”」
「? “コナン”……?」
誰のことだとキョトンとする新一に、快斗はやっぱり泣き笑いの表情を浮かべた。
だって、快斗には新一の名を呼ぶことはできないから。
せめて、彼に相応しい愛称を付けたかった。
「今日からおまえは“コナン”だ。よろしくな、コナン!」
「……誰だよ、それ。ま、いい。よろしくな、キッド」
笑って手を差し出す新一に、快斗はその手をすり抜けて新一を抱き締めた。
本当は、新一の“本当の名前”を呼びたかった。
でも、それは無理だから。
だから――。
本当に隠した本音を知っているのは、快斗以外誰もいなかった――。
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快斗が大好きという結論に達しました(笑)
新一には押せ押せで行っていただくとして、快斗は前向きにね…?
2011/11/05 23:56