「ここってさ、学校ってんだよな?」


 ダイニングのソファに引っ付きながら座りたわいない話をしていると、快斗が思い出したように問い掛けて来た。
 何しろ、快斗にとっては初めての外の世界だ。
 いつも感じられる賑やかな世界が、快斗には羨ましくて切なかった。
 自分が一生体験できない世界を、あの人たちは過ごしているのだと思うと、何だか自分の“定め”を思い知らされたようで苦しくなる。
 本当は、快斗もみんなと外の世界で笑いたかった。
 快斗の世界には、志保と紅子と寺井たち“快斗を護る大人”しかいなかったけれど、それだけでも快斗は“幸せ”だと思ってた。


「ん、あぁ…。ここは全寮制なんだ。
 俺は今まで特例で、こっちに部屋はあるんだけど自宅通学してたからな」

「なぁ、なぁ。同い年の子供がたくさん居るって本当?」


 快斗が無邪気に問い掛けた言葉の意味が理解できなくて、思わずまじまじと快斗を見詰めた。
 快斗は、ダイニングに大きく作られた窓越しに空を見上げていた。
 もう既に太陽は沈み、月が濃紺の星空を淡く彩っていた。
 快斗は何も教えられなくても、世界がどのように移り変わって来たのかを知っていた。
 それは、生まれもって知識で、快斗にとって知っていて当たり前なことだった。
 奇異の視線や畏怖の念を向けられることにだって慣れていた。
 慣れていた筈だった。
 新一に初めて会ったとき、この人にだけは“ただの一人の人”として見て欲しいと思った。
 この純粋な好意の意味を、快斗はまだ知らない。




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快斗が想いに気付くのはいつだろう?
凄く書きたいシーンがあります。
早く書きたいなぁ…。



2011/11/22 22:30
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