授業が終わった瞬間、がやがやと騒がしくなった校舎内に、新一は伸びをしながら席から立ち上がった。
昼休み前の授業はかったるくてめんどくさい。
けれど、普段の出席率から考えるとサボるわけにもいかず、怠惰に生活していた。
「あ〜〜〜〜!! かったりぃ」
ふぁぁぁっ、と欠伸を噛み殺しながら廊下を歩いていると、後ろからど突くように肩を叩かれた。
「そんなこと言うとったら事件行けなくなってまうでぇ〜」
「うっせぇ、服部」
いきなり殴られた仕返しに、蹴りを繰り出した青年は、服部と呼ばれた青年にあっさり避けられて苛ついた。
この短気で俺様な青年の名を“工藤新一”といった。
そして、そんな青年に付き合う気のよさそうな関西弁の青年を“服部平次”と。
「そういうオメーも事件ばっかじゃねぇか」
「工藤よりマシや。なんせ“日本警察の救世主”様やからな」
からかうようにからから笑う姿は、相手に清々しい印象を与えるのと同時に、少し無神経というかデリカシーがなかった。
だが、新一はそんな彼の真っ直ぐで一直線なところが好きだった。
「馬鹿言うんじゃねぇ。……でも、役に立ててるなら言うことなしだな」
「出席日数ヤバいんとちゃう? 大丈夫かいな」
たわいもない会話をしながら、自然に外に向かう新一と平次。
いつも通りの光景だった。
光景な“筈”だった。
新一が、歩みを止める前は――。
「…………………」
「――どうした、工藤?」
いつまでも追ってこない新一に気付いた平次が、踵を返して戻ってくる。
それにも気付かない様子で、新一は今まで一度も気にしたことのなかった“どこかの部屋へと続くドア”を見詰めた。
心臓が、激しく高鳴る。
何かが、ここに入れと強く訴えていた。
導かれるように扉に手を掛けた瞬間、新一は平次に腕を掴まれた。
「―――どっ、工藤っ!!」
「…………ぇっ……あれ?」
「どないしたんや。ここは立ち入り禁止やで? 絶対破ったら駄目やって言われたやん」
無理矢理引き剥がされるままに、新一は平次に腕を引かれて中庭へと歩いていった。
だが、新一の視線はどうしても“あの扉”から離れなかった。
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何で日記連載がこんなに長いんだろう?
永遠の謎です(笑)
2011/10/31 20:05