「逃げるって……俺は逃げねえよ。
 言っただろ。俺はキッドの味方だし、俺が連れ出したんだから責任くらい取る」


 潔いくらいきっぱり言い切る新一に、快斗はこっそり照れて頬を朱くした。
 初めて向けられる“何にも遮られることのない”好意。
 むず痒くて、ちょっぴり嬉しくて、瞳に涙が滲んだ。
 カッコ悪い。
 快斗はこっそり涙を拭った。


「………わかってないわね。あなた自分が何をしたかわかってるの?
 キッド様は、あの場所から出てはならなかったのよ。でも、あなたはその禁忌を破った」

「じゃあ、このままキッドを閉じ込めとけって言うのかよ!」


 紅子の淡々とした言葉に怒りを露わにした新一に、志保の激情を押し殺した言葉が突き刺さった。


「それが馬鹿だって言うのよ!
 あなた忘れた訳じゃないでしょうね? この学園の“規則”を破ったのよ、あなたは。
 もしかしたら……」

「宮野様の仰る通りです。工藤様、あなたは少し軽率過ぎます。ここから先の説明は、僭越ながら私がさせて頂きます」


 突然割り込んできた声に、三人はびくりと震えて声の主へと瞳を向けた。
 唯一驚かなかったのは、初めから周りの状況や気配に気付いていた快斗だけ。
 快斗は、親しげににっこり笑いかけた。


「“じいちゃん”こんにちは。元気そうだね」

「お久しぶりで御座います、キッド様。突然の介入をしてしまいすみませんが、もう少し辛抱なさって下さい」


 快斗に“じいちゃん”と呼ばれたこの初老の男性は、寺井黄之助といった。
 赤ん坊の頃から快斗に仕えた唯一の存在だろう。




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長くなるので途中で切れる日記連載。
眠気が酷くなる。
最近規則正しく12時前就寝です(笑)



2011/11/11 23:38
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