出来ることなら、優しい嘘で俺を騙して。


ウサちゃんマンはなんで俺を助けてくれたんですか。

聞きもしないその無意味な疑問は頭の中で反芻した。


初めて会ったのは、俺が喧嘩をしてた時。どこからともなくやってきて、喧嘩相手をいとも簡単に蹴散らしてしまった。
嵐のようだ。圧倒的なその強さと迫力に、敵わない、そう思った。

二度目に会ったのは俺が黒崎のお面を持って行った時。貴方は仲間の証と言ってお面をくれた。
今思うとウサちゃんマンには、出会ってもう既に俺が風紀部に入ることを予測していたのかもしれない。有り得る、なんて一人くつくつと笑いが漏れた。


三度目に会ったのはウサちゃんマンが由井と戦っていた時。初めて俺はウサちゃんマンと一緒に戦った。俺はいらなかっただろうけど。やっぱりウサちゃんマンはかっこよかった。


部活監査の時に俺はウサちゃんマンに会えず嘆いていたら、どうやら黒崎が俺とウサちゃんマンが会えるようにしてくれたらしい。いつかこの礼はしなくちゃな。
ウサちゃんマンは、戦う時にしか現れない人だから、本当は会わない方が良かったかもな。でも、俺はウサちゃんマンとクリスマスを一日過ごしたことを後悔してないんだ。


貴方は優しいから、いつでも駆け付けるなんて無理を言って。少し出来そうだと思わせられるところがウサちゃんマンらしいけど。
出来なかったら、それ言葉は嘘になる。口から出任せとはまさにこのことだけど、それでもその言葉が俺には嬉しくて。



ねぇ、ウサちゃんマン。
俺はちゃんとわかってるんだ。
当たり前だけど、ウサちゃんマンは仮の姿で、お面の下には本来の貴方がいるということを。
それでもいいんだ、それが貴方だから。きっとウサちゃんマンには顔を隠す必要があるんだろう。
陶器のようなそのお面は、ウサちゃんマンの表情を隠した。





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ウサちゃんマンを尊敬する早坂くん。