温かい春の昼下がりは二人で




最近、黒崎に弁当作ってる奴がいる。物好きだよな。俺も一口貰ったことがあったが、すげぇ美味しかった。誰が作ったのか少し気になるが、別に聞いてどうこうする予定もないから聞くほどでもない。黒崎はそいつのことを友達とか言ってたけど、本当かどうか疑わしいところだ。あいつはすぐ友達って言うしな。それ以前に、クラスに女の友達いないじゃねぇか。

なんて一人で考えてる自分になんだか今日の俺、おかしいな。と思う春を迎え温かくなった昼下がり。黒崎はまたお弁当を受け取りに行ったので、一人木陰を独占していた。


そういえば、以前女子高生より俺がいいなんて言ってたな。本気かどうか真意は俺にはわからないが。それでも嬉しかった。照れ臭くて、顔もろくに見れなかったけど、というか黒崎はお面で顔を隠しやがったが。今でもあの時のことは鮮明に覚えているんだ。あの時、俺がいるとあいつが困るんだって気付かされて、自分から離れた。今まで散々振り回されたし、正直しつこいから、清々すると、そう思ったのに。クラスに行かずに勉強しても集中出来ないし、思い浮かぶのは黒崎の顔ばかりだった。胸の中が、もやもやして苦しくて。いつだったか、黒崎が人質にとられた時みたいな、苦しくて辛くて堪らなかった。

黒崎は今でも俺がいいって、そう言ってくれるだろうか。俺だけは他と違うって、俺の隣がいいんだって言ってくれるだろうか。こんなこと考えたって仕方ないのに、答えの出ない自問を繰り返す。


女一人に何を悩んでるんだか。一匹狼が代名詞だった筈の俺が、今や番犬になっちまったな。悩むのも馬鹿らしくなってきたぜ。



「…くん…早坂くん!」
「く、黒崎!いつからそこに…?」
「さっき!早坂くんが座ってるのが見えたから脅かしてあげようかと背後から忍び寄ったんだけど…なんだか早坂くん張り詰めた顔してたから」
俺、そんな顔してたのか?黒崎のこと考えて?
「…ちょっとな!考えごとしてて」
精一杯の誤魔化し。
「話くらいは聞くよ…?解決は出来ないだろうけどね!」
「気持ちだけもらっとくわ」
「早坂くん今、私のこと役立たずだと思った!?」
危ない危ない。気付かれるところだった。何気に鋭い。残念だけど、黒崎には話せそうにないな。だって恥ずかしいだろ?今も俺の隣でいたいかなんて、告白じゃあるまいし。
「それより、早く飯食おうぜ」
「そうだね!私もお腹減ってたんだった〜」
なんとか話題を逸らすことに成功した俺はいつものサンドイッチをビニール袋から取り出した。



「さてと、そろそろ予鈴だから行こうぜ」
昼飯後のこのほのぼのとした空気は名残惜しいが、学生の本文である授業の時間が迫っていた。
「早坂くん、次ってなんだっけ?」
「数学」
「宿題は…」
「あるな」
「うわあ、やってないよ!鷹臣くんにヤられる!!」
そう言って黒崎は走りだした。しょうがないので俺も小走りに着いて行く。たまに鈍臭いところがあるから、途中で転ばれても危ないしな。




なあ、黒崎。
俺のアドレス帳はあの時から今もお前がが1番なんだ。

―――――
俺の中では黒崎が1番だけど、黒崎の中で俺が1番じゃないかもしれないと悶々とする早坂くん。







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