笑顔の歓迎

ルキちゃんが必死に泣き止ませようとしていたのに、泣いてしまった自分が恥ずかしい。
泣いている間にルドルフさんがフォイフォイさんを、お城に連行したらしい。
お別れが言えなくて、少しだけさみしい。
被っている帽子を目深にひいて、赤い顔と涙の痕を隠す。

「すみません、お見苦しいところを...」

「い、いや、大丈夫ですよ!」

目の前で泣いてしまったというのに、優しい人だ。
茶色の髪が特徴的な、自分と同じ位の少年、アルバさん。

「えっと、レンヤさんでいいんだよね?」

「は、はいっ」

「どうして、ルキの事を知ってるの?」

そんなことを聞かれても、僕は近所だから...

「あっ!」

「え、なに!?」

「ルキちゃん!これ、お届けもの!!」

こっちの世界にきた一つの理由、ルキちゃんへのお届けもの。
これを忘れるなんて、ハニーさんに合わせる顔がない。

「お弁当?」

「うん!」

喜んでくれるルキちゃんが、何とも可愛らしい。
アルバさんにもう一度向き直って、返事を返す。

「僕、ルキちゃん家の近所に住んでるんです」

さて、帰らないと...と歩き出そうとした瞬間、黒い髪の男の人に腕を掴まれた。

「ルキの家の近所って事は、魔界に住んでいるんですよね?」

「そ、そうですけど...」

「どうやって帰るんですか」

黒髪の人に言われて、一番の問題点を思い出した。
生憎、僕は空間移動魔法を覚えていないし、人間界から魔界に行くのは困難だ。

「...どうしよう、帰れない...!」

「今更!?」

血の気が引いていくのを感じる。
どうして気づかなかったんだ...

「ねえ、レンヤさんも私達と一緒に行く、っていうのはどう?」

戦力は有るに越したことはないでしょ?
その言葉に続いて、アルバさんと黒髪の人も話し出す。

「いいですね、レンヤさん中々強いですし」

「うん、僕も賛成!ルキちゃんナイスアイデア!」

ワイワイと楽しそうに話す三人。何て温かい人達だろう。

「よろしくお願いします」

久々に、思い切り笑ったと思いました。


心の留め金を外して

mae ato
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