超えるか声か
岩陰から現れた、桃色の髪の人。
すごく綺麗だけど、いきなり岩陰から現れるのはどういうことなんだ。
しかも転んでる。
「ドジっ娘ですかね、それとも男でしょうか、勇者さん」
「僕に聞かないでよ!そういうことは、せめて自分の頭の中だけにして!!」
「(わかりました)」
もうやだこの戦士、趣味が謎すぎる...あと、なんかよくわからない心の声が聞こえる...
「僕はヒーローだからね」
岩陰の人が凛と、爽やかに言った途端、周囲の空気が変わった。
フォイフォイさんもそれを感じたようで、右腕を構えた。
岩陰の人は地面に片手をかざし、細い指先をフォイフォイさんに向けた。
「あ、アルバさん、ロスさん、離れよう!」
「えっ、何で!?」
「レンヤさんが戦うときは、45m以上離れないと...!」
必死な魔王に逆らうことができず、素直に従った。
できるだけ遠くに走る。
「『僕が、守る』」
力強く、でも悲しそうに呟いた声は、暖かさと冷たさを含んで空気と地面に吸い込まれる。
刹那、重低音が鳴り響き、地面から無数の植物の蔦が飛び出した。
「な...っ!?」
フォイフォイさんが避けようとしたけれど、上半身しか動かなかった。
理由は簡単、脚が例の蔦に絡みつかれていたから。
腕しか動かせないフォイフォイさんに、蔦がものすごい早さで向かって行く。
その場にいた誰もが目を瞑った。
暗闇の中で目を見開く