「...腹筋が割れない」

深い溜め息と共に零すと、正面に座っているノピアさんが驚きながらも少し訝しげにこちらを伺ってきた。

「なぜ腹筋を割りたいのですか?」

クリームパイをもくもくと、でも行儀良く食べるノピアさんはかわいい。
抱きつきたい衝動に駆られるけれど、彼女は年上。敬意を払わなければ。

「頑張って体力作りはしているんですけど、異様なまでに腹筋がつかないんです...」

「そうなんですか...私もあまりついていないから、何とも言えませんが...」

いや、あの強さで腹筋がついていないって、それこそすごいと思う。
どうしてだ、何を間違えてこんなに腹筋がつかなくなったんだ。

「本当、ノピアさんは凄いと思いますよ...あんなに体術に長けているなんて、羨ましいです」

「いえ、私は魔法が使えないのでナマエ様の方が素敵だと思いますよ」

私も魔法が使えたらいいのに、なんて。

そんなに可愛い笑顔を向けないで、歯止めが効かなくなりそうです...

褒められたことは少なからず嬉しかったので、顔が赤くなるのを感じつつ紅茶を口に含む。
オレンジペコだろうか、爽やかで美味しい。
ノピアさんが入れた紅茶と僕が作ったクリームパイは、何だか釣り合っていない気がしてきた。
ああ、かわいらしい人だなあ。

「...そうだノピアさん、僕がノピアさんに魔法を教えて差し上げます、そのかわり、ノピアさんが僕に体術を教える...どうですか?」

きょとんとした顔、まだ幼さが何処かに残る表情。
少し間が空いてから、微笑んだ。大人の顔だ。
余裕の有る、年上の顔。

「ええ、いいですよ」

この人は、一瞬のうちに色々な顔を見せてくれる。思わず僕も笑ってしまったものだから、小さなお茶会は大きな幸せで包まれる。

足元に一輪、白い花が咲いた。




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