「名前さん、起きてください」
下腹部に感じる圧迫感と、事務的な口調のテノールに目を薄く開く。
あったかいお布団の誘惑に、もうちょっとだけ、そう言って毛布を被ろうとすると手首をやんわりと握って止められた。
あったかいな、とか、案外硬いなあとか考えていると、彼の特徴的な髪型が目に入った。
「...それ、何ですか?罰ゲーム...?」
バリサンこと尖った毛の横と尾てい骨辺りから、黒い動物の耳と尾が、ふわふわと毛を揺らしながら存在を主張していた。
「知りませんよ、魔導師さんなら知ってると思ったんですけどね...」
ふてくされたように、目を逸らして眉をしかめる。
でも、ロスさんと動物の耳なんて、素敵だと思う。
性格とミスマッチなところとか、むすっとした表情が別のものに見えてくる。
「...可愛い...っ」
僕の上に乗っていたロスさんに抱きついて、もう一度ベッドに倒れる。
何が起きたかわかっていないロスさんが、目を見開いている。
「ロスさん、それ、可愛いです...」
寝起きで声が掠れているけれど、そんなの関係ない。
先程触れた手よりも温かい首元に、擦り寄る様に腕を回す。
ああ、あったかい。
「...魔導師さん、寝ないでくださいね?」
「痛いですロスさん頭掴まないで」
ごめんなさい、笑いながら言って首元から顔を離すと、いつもの気怠そうな表情。
でも、後ろに見えるものがゆらゆら揺れているのがわかって。
「嬉しいんですか...?」
くすくすと笑いながら見つめれば、ばつが悪そうに目を逸らした。
ああ、やっぱりだ。
「...名前さんに生えればよかったのに」
そう言いながら抱きついてくる年上の男性は猫そのもので、再び首筋に腕を回して眠りについた。
ロスと猫