戦勇。 | ナノ
クレアシオンとさよならする

※憂鬱主if、結構長いです




「クレアちゃん...僕もう疲れたよ...」

「だめだよレンヤ!まだ祭壇画を見ていないじゃないか!!」


「頼むからそこで死亡フラグ建てるのやめろ」


扉を開けて僕の手をがっしりと掴んだクレアちゃんに、むすっとしたシーちゃんが踵落としを食らわせた。
クレアちゃんの頭が、見事に膨らんでいた。
そう、それはお餅の如く。

「シーちゃん、クレアちゃんが痛そうにしてますよ?」

「これからに支障はないだろ」

相変わらずむすっとして、遊ぼう?と視線で伝えてくる。
いや、今日は遊ぶために来た訳じゃないんだ。
シーちゃんの頭を軽く撫でる。

「...あのねー、シーちゃん、クレアちゃん」

珍しくきょとんとしているシーちゃんと、ニコニコ笑うクレアちゃん。ああ、言いたくないなあ。
クレアちゃんの手を弄りながら、笑顔を作って言う。

「僕ねー、眠ろうとおもうの」

「眠るって、そんなの当たり前じゃんか」

「普通に寝るのとは違うんだよ、シーちゃん」

よくわかっていない二人に、少し寂しくなる。

「今日から1000年後まで、ずっと眠り続けるの」

意味を理解した二人は、早かった。
玄関に立ったままだった僕を家に引き込むと、問い詰めるように壁に叩きつける。
痛い、そう零して二人を見る。

「...なんで、なんでそんな事言うんだよ...!」

「そのままの意味、だけどね」

「ふざけんなよ!!」

シーちゃんの拳を食らう。避けられなかったんじゃなくて、避けなかった。
そのことに驚いたらしく、シーちゃんがたじろぐ。身長も、速さも僕にリーチがあったからかな。
案外痛いなあ、なんて考えながら二人を抱き寄せる。

「僕ね、1000年後を見てみたいんだ」

クレアちゃんが驚いたのがわかった。シーちゃんも驚いていたけれど、さっきみたいに殴りはしなかった。

「それに、シーちゃんのパパさんに申し訳ないこともしたから」

掌をくるんと回すと、小さな花が咲いた。何だっけ、このお花。

「レンヤ、それ魔法?」

「そうだね、まだ全然だろうけど」

クレアちゃんの髪に刺して、もう一度二人を抱きしめた。
温かいな、弟たちは。

「シーちゃんとクレアちゃんの分も、1000年後を見てまわりたいの」

だからね、僕は眠ろうと思う。

温かい弟達の目には、絵の具のような綺麗な涙が溜まっていた。

「無責任なお姉ちゃんでごめんなさい、でも、血は繋がっていなくても大好きな事に変わりはないから」

シーちゃんがないて、クレアちゃんが泣いて、僕も泣いて。
部屋が洪水になってしまうんじゃないかってくらい、いっぱい泣いた。
だって、最後なんだもの。泣いたっていいじゃないか。

「レンヤ、俺っ、1000年後に生まれ変わって、真っ先に会いに行くから...!」

「お、俺だって...!!」

涙でぐしゃぐしゃの二人は、もう見れないだろうから。
いっぱい抱きしめて、いっぱい撫でた。夕方、パパさんが帰ってきて、泣いている僕たちを見て優しく笑った。
二人と一緒に、僕も撫でられた。
懐かしい、両親と実の弟を思い出した。もっと泣いてしまった。

「...シーちゃん、クレアちゃん」

目線を合わせようとしゃがむと、シーちゃんとクレアちゃんにお守りを渡した。
お守りと言っても、金木犀の花が入っているだけだけれど。
どうか、忘れないでほしいなんて、二人の中で僕が生き続けますように、なんて。
無責任で身勝手で、最低だ。

「レンヤ、また来世で」

「来世でねレンヤ、俺等のヒーローさん!」

最後には笑ってくれた二人は、最高に可愛かった。

「うんっ、また、来世でね!シオン!クレア!!」

思いっきり笑った。
ありがとう、今まで、本当に。いつまでも大好きです。




準備は、終わった。


大切な弟たちと、優しいパパさんと、何処にいるかもわからない弟に、思いを馳せて。

寝台で眠りについたら、きっともう戻れない。
でも、それでもいいかな、なんて思う。

寝台に寝転んだら、色々なものが見えてきて。
シオンと一緒に仕事をしたことや、クレアと一緒に遊んだこと
パパさんの研究のお手伝いをしたこと、事故で両親と絶縁したこと
弟を含めた四人で遊んだ最初の日も、最後の日も

最後まで笑ってくれたシオンとクレアのことも。

全部、僕の宝物だから。扉を閉じて、鍵をかける。
ポケットから取り出した写真には、笑顔でこちらを向いているシオンとクレアとパパさん、弟...弟がいて。

「 大好き 」

そっとキスをして、ポケットに仕舞い直す。



ああ、何だか眠たくてたまらない。
音も無く、蔦が身体を包み始めるのがわかって、目を閉じた。






きっとまた逢えると願って
(またいつか君と)
(笑いあえると信じています)






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フランダースの犬を見た後に書いたら、こうなってしまいました

どこまでも真っ直ぐで、だけど悲しいお話がかきたかったんです、はい

続編とか、書きたいなあ...



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