会う人にコトハのことを聞くが、全ては絶望的な言葉しか返って来ない。あたしたちは、建物を見上げられる場所へと、階段を登っていた。

「だめだ…見つからないコトハ」

革の言葉に掛けれる言葉が見つからない。それは、気休めの言葉しか頭にしか浮かばなかったのだ。


「せっかくの地図はスラれるし、なにやってんだ俺は…」
「そんな!革のせいじゃない」

「巳束、分かってんのか?逃げるにもこんな絶壁、越えられるわけない。
 それに“ツツガ”だってどこにいるか分からない。まさに八方塞がりじゃん」


革は谷底を睨むように叫べば、自分の腕から劍神を取り出す。「劍神、“顕れたまえ”!!」っと、言って。

だけど、劍神はなにも反応を示さない。

鉄格子に叩きつければ「なんだよ、なにが選ばれた鞘だよ、なんにもできないじゃんか!!」と、絞めつけられるような声で叫んだ。聞いているこちらが、痛いぐらいに。


「秘女王、すいません。やっぱり俺には無理だ」


そう呟く革に声を掛けようとすれば、前の方から「――それは、劍神か?」っと声がした。その方向へ顔を向けば誰かが、革と対峙するように男がそこに立っていたのだ。


「――それは、劍神か。なら君は“鞘”だな」
「誰っ?」


声を掛けてきた男に、聞くが返答がない。そして、あたしの顔を見れば「――ほう、なるほど」と呟いた。何なのっ?

フードを被り額と首筋には、模様のある男。この場所にいるのは罪人のみ。革は自分の持っているコレが、劍神だと気付いたことに「…まさか“ツツガ”!?」っと声を上げた。
だが、目の前の人物は「私は罪人だ、君があまりにも思いつめた表情をしていたので…彼女を置いて身投げするのか」と言ってきたのだ。
革は後ろにいたあたしを、より背中へと隠すようにすれば目の前の人物と話を始める。

「そんな度胸、俺にはないです」
「なぜ?君は劍神を操る鞘だろう」

問いただされた言葉に、革は告げる。“鞘”に選ばれたなんてきっと間違いだと。劍神は応えてくれない。コトハともはぐれ、この異世界で何ができるのかっと。


「秘女王との約束なんて、こんなんじゃ――」

「秘女王との約束?」


それは、秘女王に言われた言葉を思い出していた。“私に代わってこの世界を束ねて欲しい。そしてその劍神を私の命尽きるまでにここへ――”を。

「秘女王もメチャクチャだ。俺なんかに、この世界のリーダーになれって、生徒会長になれってほうがまだマシだよ」

あたしは「…革っ」と呟き、自分の拳に力を入れて聞いていた。

「彼女の顔は違うようだが、君がそれだとそうなんだろうな。そうして自分で思いこんでるかぎり、なんでも無理だろうね」

革はあたしの顔を一瞬見れば、顔にグッと力をいれて前を向いた。
迷ったら落ちついて、目の前にあるものを全体からよく見てごらん。「そうすれば答えが…自分にできることが、きっと見えてくる」っと教えてくれる。

「それに君たちは、なぜ秘女王とそんな大きな約束をした?」と彼は、あたしと革を交互に見て言う。たしかに秘女王はあたしにも何かを伝えようとしていたけど、言われたのは革のみだ。

“そなたをただ信じている”の言葉を思い出せば、革は告げる。


「自分のこと信じてくれて、嬉しかったから――!!」

「信頼に応えたいんだね、…すごいことじゃないか。君ならきっとできる」


そして彼は、あたしに眼差しを送り「君にもだ」っと言葉を付け足した。

「“きっとできる”…」

革の言葉に「そうすれば、その劍神も―――」っと彼が口にすると、煙がゴォッと広がりあたしたちの視界を奪われてしまう。革はバッと劍神で煙を斬るが、目の前にいた男は消えていたのだ。


「今の人、いないよ!?」
「なんだあの人…」


(あの人は、あたしにも言っていた…。何かを知っているんだろうか)




何かを知る者、ここに

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