どのくらい眠っていたのだろうか。「革…」と、口にすれば横に居る革も「巳束っ、」っと呟いた。「…ほら、来い!」っと兵が声を上げている。
その方へと顔を向ければ「いつのまに潜り込んだ!」っと兵に引っ張られるようにコトハの姿があった。
「!、コトハっさん!?」っと呟けば兵は牢の鍵を開け「仲良く“ガトヤ”に行くといい」と告げてコトハを押し入れた。

「コトハ!!」
「よかったアラタ様!巳束さんも、群衆の中から見てて気が気でなくて…」
「なんでこんなこと!」

革の言葉にコトハは笑みを作り「言ったでしょう“そばにいます”って」と告げた。
(コトハさん――…っ)
その笑みになぜか、胸に突っかかるものを感じてしまった。

コトハは、両肩に抱えていたあたしたちの荷物とマカリから預かり受けた劍神を渡してくれた。“劍神を鞘である「アラタ」の元へなんとしても届けておくれ、きっとあの子を護り導くはず”っと。


「あの、巳束さんにもマカリ様から言付けがあります。革っと一緒に“その目で確かめて欲しい”っと」
「えっとその…」
「マカリ様からの真意は分かりませんが、同行をお願いできますか?」


コトハの言う意味の言葉は分かる。あたしはここでは、パッと出て来てしまった人間なのかもしれない。
「…それは、大丈夫です」っと答えればコトハがフ―ッと息を吐いて、革の襟を掴み開いた。

「あ、あのコトハさん?」
「ありますね、ミチヒノタマ!秘女王がくださった…、キクリ秘女!なぜこんなことに…」


コトハが革がしている勾玉を手に、告げればカッと大きな光を放ちあのとき見た秘女王を映し出した。
その姿にコトハが「秘女!?」と口にすれば“…コトハか?”とキクリ秘女の声が耳に届く。

「生きて…生きてらっしゃったのですね!!」

“最後の天通力でなんとか命は保っているが、いつまで持つか…”
“ようやっと届いた…。革よ、聞こえるか”

その声に革は「はい!」っと告げる。

“私はこれまで天通力で数多の劍神たちをひとつにまとめてきた。だが私が倒れた今、制御してきた劍神たちの神意は解放されてしまうだろう”

キクリ秘女の告げる言葉に思い出すのは、カンナギが見せ“火焔”っと告げたあのことだった。

劍神と組む“鞘”が、それぞれが思いのままに神意を使えばこの世は戦乱と化す。強き者が力をふるい正義が歪んでしまう。大勢の人々が苦しむ。
“革、新しき「神鞘」よ、頼みがある…私に代わり、そなたがこの世界を束ねて欲しい。そして革の側にいるもの、そなたの名は「ミツカ」か”


「あ、あの…秘女さまの言うミツカかは、分かりませんが巳束と申します」


その言葉にドキッとしてしまう。キクリ秘女の告げた名は、あたしの名でいいのか?っと。革は、隣で束ねる!?ぼ、僕が!?っと言おうとしている言葉を飲み込もうとしていた。

“そうか、やはり…――っ、そなたたちが遠い世界から来た人間であろうと構わない…”

「「!!」」
「?」

“…審議の場でのそなたたちの言葉、本当に嬉しかった。あの瞬間、私は分かったのだ”


秘女王は告げる、革の心が必ず道を拓く。“その劍神”を永き眠りから目覚めさせた、そなたたちなら―――っと。


“どうかその劍神を、私の命尽きるまでにここまでに届けて欲しい…”

革は、劍神を手に「劍神を!?…でも…」っと口にする。

“ミチヒノタマが黒くなるときが最後…。だが私はここで待つ”

「(無理だ!俺なんかに…!!)」
「革…、無理なんかじゃないよ。あたしもいるっ」

ただそなたを“信じている”――――“ミツカ、そなたも―――…”

「アラタ様、秘女が!」

革はその言葉に鼓動が大きく揺れた。「…もし、ホントに俺なんかにそれができるのなら…」っと、劍神を両手の平に乗せて口にした。

「…やってみせます。必ず秘女王の元にこの劍神を届けます!」


“――――…っ”

「あの秘女さまっ!?」


何かあたしにも伝えようとしていたのだが、それは届かず、スウ…っと消えてしまった。



(あたしは―――…っ)






真意は分からず、その心に決意する

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