カナテは、もし自分が鞘で鬼化したら、きっと元に戻れなかっただろうという。革のような優しさは自分にはないし、大きな使命もない。
ただ、革たちと同行しているのは、自分に罪を擦り付け見捨てた盗賊団を捜すためだと告げる。
「見つけたら、全員ブッ殺す」
それを口にした、カナテの顔は真剣な表情だった。
「カナテ!?」
「復讐さ…あいつらはギンチの親父も殺した!絶対許さねェ!…首都までお前と一緒して見届けてェとも思うけど、俺とお前は…違うのさ」
「冗談…だよな?」
困惑を隠しきれない革に、カナテは革が全部見せてくれたから本当のことを明かしたと、ニッと笑いながら言った。その目的が果たせたら、革とはお別れだと。
「…変なこと言うなよ…、ともかく危ないことはやめろよ?」
「……………」
カナテは何も言わなかった。それは、揺るぎない決意であるということ。2人の間に沈黙が続こうとしたとき、茂みから巳束とコトハの声が聞こえてくる。
「いたいた!なにしてるの2人共!」
「コトハちぁん!なんでもないさー!!」
「ん…?あれ、巳束は?」
現れたのはコトハだけで、巳束がいないことを革が口にする。コトハは木の陰に隠れている巳束の手を引っ張り、どうして隠れるの?と口にしながらその手を勢いよく引いた。
「コトハ!!引っ張り過ぎだよ……」
飛び出るような形で、あたしは革とカナテの前に出てしまう。なぜだか2人共、あたしのことを見て固まってしまっていた。
「巳束…、その格好…」
「ジャージあるから、大丈夫って告げたんだけど…なんか着せ替え人形のごとく…」
「おぉぉ――!!ミツカ、なんかわからんけど似合うさ――!!」
「カナテ!!何か、分からないって一言多くない!?」
何も言ってこない、革の顔を覗くように隣を見上げれば顔を逸らされてしまう。
「やっぱ、変だよね。あたし、ジャージに変えっ―――」
「それでいい、そのままでいいよ」
変えると言おうとした瞬間、革が声を上げる。口元を押さえていて、再度そっぽを向く革にカナテは革の顔が赤くなっていると口にする。こいつ、赤くなっているとおちょくっていた。
それを見て、あたしとコトハは笑うが、この場所にひとり居ないことに気がつく。
(カンナギ…?)
周りを見渡せば、樹に寄り掛かるカンナギに気付きあたしは近寄った。
「……カンナギ。あたしが、秘女族かはわからないけど。あたしは天海巳束であって、革の側を離れない」
「それでいいんじゃないか?俺はただ、気になったことを口にしたまでで、どうこうするつもりは無いしな」
その顔は妙にスッキリしているようで、あたしの表情を映しているようだった。
(今は門脇と革のこと…嫌いなら、その人と もう交わらなければいいはず。門脇は、何か違うものを求めて…‥?)
どこにいるかは分からないが、門脇が見ているかもしれない、天和国の空をあたしは見上げた。
「アイツが、…アイツがやっと、俺をマトモに見やがった――相手にしようともしなかったアイツが
今度は逃がさねェ、日ノ原!!んでもって、奪ってやるよ。巳束を――!!」
誓いと約束
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