振りかざそうとする革の腕を、あたしは掴んでいた。闇を纏う腕に、必死にしがみつく。

「“鬼”になったらダメッ!!いつもの革に、お願いだから!!正気に戻って、革――――ッ!!」
「――いかん!このままでは“創世”が完全に“鬼神”となる!」
「革っ!!巳束!!」

正気を失っている革の耳には、あたしの声は届いていないようだ。怒りと憎しみを再び、門脇へと革は放とうとし、その炎があたしの体へと直撃する。痛みに顔を歪めるが手を離すことは出来ない。


「ミツカ―――、コトハちゃんッ!?」


止まらない革の怒りに、コトハも革の体を押さえあたしを支えようとする。


「革は、負けない。あたしの知ってる革は誰にでも優しくて」
「巳束、しっかりして!!――っく、!」
「コトハ!!」


コトハの体にも、その炎は直撃し、足元をふら付かせ崩れてしまう。


「革、傷つけたりしないで――ッ!!お願いだから、気付いて、―――創世の中に、“ツツガ”と“ナグ”がいることを!!」

――お願いだから、コトハをツツガをナグを、革自身を傷つけないで!!


あたしの叫び声と同時に、眩い光が革を包み込んだ。光が革へと流れ込むようにツツガとナグの姿が、革の脳裏に浮かぶ。
闇の炎はいつの間にか消え、革を中心とし、四方の地表面には亀裂が走っていた。


「…あの光は――――ッッ!!」


劍神“創世”の色、また宝玉に光が戻る。革は、自分がしてしまったことに言葉を失ってしまい、そのまま握っていた創世を手放してしまう。
あたしはの腕や体は限界だった。ズルズルと引き摺りながら言葉を発する。今度は、届くことができる革に。


「…革、よかった。革の意志は強いんだよ…‥‥」


そのまま、あたしは崩れるように意識を手放してしまった。


「コトハちゃん!!ミツカ!!」


心配したカナテが3人の元へ駆け寄ろうとするが、創世に伸びた手に気付いた。自分の持っていた槍を振りかざせば、カンナギと相見える。


「…カンナギ様!!返せ!!それはアラタの劍神さ――――!!」
「手放したのは、アラタ自身だ」



門脇は座り込む革に、襲いかかろうとするが六ノ鞘に止められる。一旦、退けと告げられる。納得しない門脇に“逐力”の神意を試すだけのはずという。

「それに、予想外の事態が起こった。あの“創世”が鬼と化すとは。アラタを消すには、やはり“逐力”を完全に目覚めさせねば――来い」
「……‥っ、」
「あの光についても、知る必要があるようだ…‥‥」

革にしがみつきながら倒れた 巳束の姿を脳裏に焼き付けるようにして、門脇は六ノ鞘に従った。

「巳束ッ」

あいつの側にいるから、巳束が傷つくんだ―――――。


カンナギはカナテを蹴り飛ばしたあと、高台から消える影に気付き それを追うように崖を上がった。飛び立っていく浮舟を目にした。


「やはり、六ノ鞘…!」



闇と化す

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