「せめて、もう一度交信を…秘女王 ―――!」
ポ…っとミチヒノタマが光り、洞窟の壁に円形の光が映し出される。その光に革は、秘女王と口にするが、映し出されたのは現代にいる制服を着た“アラタ”だった。
「おぉ、ヒノハラ!!」
期待とは違う結果に、革はガクッと肩を落とした。
「なんだよ、その“ガクッ”て!!」
「いや〜…あれ?もしや学校?」
「そーなんだよ、てかヒノハラ!!秘女王のミチヒノタマの色が変わってきたんだけど…なんでか、お前知ってるか!?」
「……………」
革の首元にあるミチヒノタマの色の変化に気付いたアラタは、自分のも同様に変わってしまっていることを告げた。何か、天和国であったのかと。
* * *
誰も自分を見ようとしない。自分を見捨てた母親、議員の息子だからといって外面を気にして内面を見ようとしない、父親。
自分は好きで部活を辞めた訳じゃなく、その場所を 日ノ原革 に奪われたと、門脇は恨んでいた。
そして金銭目的で近付いてきた上級生に、親父がいなければ何も出来ないと告げられナイフを向けてしまう。門脇は呼び出された視聴覚室から、逃げだした―――
「じゃあ、秘女王はまだ無事なんだな!?その劍神…“創世”だっけ、それ届けたら助かるのか!!」
革は告げていなかった、鞘同士の“大王争い”や“降し合い”、自分の使う劍神“創世”で劍神を束ねること、今まであったことを話した。
「よかった…!ったく、そんな重大なこと早く言ってくれよ!」
「悪い。でも今は、話したとおり十ニ神鞘をはじめ、鞘たちが秘女王に代わって“大王”になろうとしている」
“降し合い”、劍神ごと鞘(アイテ)を自分の劍神に取り込むこと。もし、革自身が負けたら自分ごと“創世”は消滅して秘女王は亡くなることを、アラタも知った。
「お前って、スゲェな!」
「いや、俺は!秘女王が信じて命を託してくれたし、ここに来て…俺、護りたい人がはっきりした」
「それって?ミツカのことか?」
「いや、あのっっ!!?それより、アラタは儀式(マツリ)で十二神鞘 全員見たんだよな。うち“六ノ鞘”って…見たか?」
6人、同じ格好をしていた者がいたことをアラタは思い出す。ただ雷の逆光で細部まで見えなかったと。
「そいつらが六ノ鞘…」
頭に過ったのは、カンナギの“不気味な奴ら”と告げた言葉だった。
「どうしたヒノハラ」
「いや…なんだろう?すごく嫌な感じがする!」
「嫌な感じ…!?…どうした?」
アラタは、頭を抱え込んだ革を心配した。
顔を上げた革の視界に、アラタの後ろにある階段から下りてきた門脇が入ってしまう。思わず、目を見開いた。嘘だろ というように。
「……日ノ原?」
門脇も目を疑った。息を切らし階段を下りれば日ノ原が鏡らしき前にいると思ったら、今まで日ノ原革で見えていた人物が、全くの別人に見えるのだから。
そして、そこに映っている洞窟らしき中、壁ではないその向こう側に日ノ原革がいることに。
「どういうことだ、これは…ッ!!てめえ!!…どういうことだ!?」
「革?」
戻ってくる気配がないことに、気になって洞窟の奥に進めば革が向こうのアラタと話をしている姿が見えた。
それで遅いのかと、納得をすれば突然「巳束」と名前を呼ばれる。それは、懐かしい声の …‥
「門脇?」
「巳束っっ!!」
映し出されているのは、少し前までそこにいた学校だった。そしてアラタと一緒に門脇がいる。酷く混乱をしているようで、触れることは出来ないが、革に掴みかかりそうな勢いだった。
突如現れた門脇に対して、心臓が激しく音を立て、革は動揺をしていた。
「門…脇…ッ」
「待って、門脇!落ち着いて!!」
逃げるように革が一歩 引いた瞬間、交信がそこで途絶えた。
革と門脇のことは、あたしにはどうすることも出来ない問題。門脇になぜそこまでするのかを聞いても、これは日ノ原との問題だっと言って、あたしには 取り合ってくれなかったのだから。
* * *
違和感を感じたことは当たっていた。日ノ原とニセモンが俺を騙していた。そして、居なくなった巳束があいつの側にいたとは。なんで、あいつなんだよ。
門脇は、アラタに日ノ原と一緒になって騙していたと言い、アラタの言葉を聞こうとはしなかった。
その怒りは、この場所にはいない革へと向かう。
「バカに…っ、バカにしやがって!!ちきしょお…ッッ…
どいつもッ…、こいつもッ!!
――― 聖なる森よ。
“ブッ殺してやるッ!!”」
――― 導きたまえ!
それは“神開(カンド)の森”に足を踏み入れた、六ノ鞘 ハルナワと 門脇の共鳴。“神開の森”が開かれ、入れ替わりがなされるときだった。空間が歪むように、門脇を巻きこんでいく。
「カドワキ!!俺の手をつかめッ!!行っちゃだめだ―ッ!!
カドワキィッ!!」
渦を巻いて、闇に闇に飲み込まれていった。
動き始めた闇
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