革も同じように、秘女王のことを思っていた。その気持ちを考えたことはあるのかっと告げる。「お前らには神を操る資格なんてない!!裏切り者のただの人殺しだ!!」っと。
周りの民衆も、革の声に「十ニ神鞘が?」や「秘女王に誓った12人だぞ、あり得ぬ」と声を出し始めていた。

それを見ていたカンナギは止めようと簾から出るが、先に出ていたアカチっと呼ばれた男が「静まれ!!」っと告げていた。



「我らが人殺しだと?罪人の分際でなにをほざく」



カンナギより先に出ていたアカチは鎧を身に纏い、目を仮面のようなもので隠していた。
「我々の嘆きこそ深い。長らくお仕えした秘女王を貴様らなんぞに殺されてな」っと告げれば「我らの劍神も泣いている…」と口にする。その見えない表情に、あたしは睨んだ。


審議を告げるように、別の者が「秘女王殺しは天地開闢(テンチカイビャク)以来の大罪!!よって“アラタ”と“右の女”には斬首死刑を言い渡す――――」っと。天と地が初めてできたとき以来の大罪。
だが、カンナギが「いや!!」っと声を掛けた。

「秘女王殺しを一瞬で楽にして良いのか!?むしろ生きたまま、地獄の苦しみを味わわせてやるべきだ!」っと。あたしと革は「カンナギ!?」と口にしていた。


「“ガトヤ”に流刑しろ」


その“ガトヤ”の言葉に周りが騒がしくなり、アカチも「―――流刑か」と呟く。
「それも良かろう…あそこなら確かに罰としてふさわしい。我らの劍神の怒りもおさまろう」っと。周りの者も引っ切り無しに賛同し、異議なしっと告げる。


「ちょっと待って――」と声を出せば、神開の森と同じような“革”っと呼ぶ声が耳に聞こえてくる。その声は革にも届いていたようで、ハッと周りを見渡していた。

「最終判決を下す!!秘女族アラタにその女、“ガトヤ”に流刑を言い渡す」

(今の声って、ここへ来たときの――…?)



 * * *


革とあたしは、足にも手と同じように枷を付けられ四角い牢屋に入れられ、外の群衆の目に晒されていた。牢屋の先には移動車のようなものがあり、民衆の間を抜けて行く。
「あんな若いのが、まだ幼い顔をしてこわいねぇ」っと周りの者たちからは、先ほど変わらず罵声が飛び交っている。

「巳束、あいつらが言っていること聞くなよ」
「大丈夫だよ!革、あたしの特技は右の耳から左の耳へと聞き流しだからさっ」

心配する革に、平気だよっと告げるが「無理すんなっ」と言われてしまい、気付いたら革の肩に顔を埋めていた。革は、不安げな声であたしの名前を呼ぶ。
「少しだけ、少しだけでいいから」っと呟けば「あぁ、いつまででもいいよ」と優しい声で言ってくれた。革に、心配掛けちゃいけない。

「革、汗くさいよっ」
「おい、巳束!しょうがないだろ、お前だって」

顔を上げて笑うように言えば、いつものように革は返してくれた。
過ぎて行く者の誰かが「処刑じゃなくて“ガトヤ”らしいぞ」と告げれば「“ガトヤ”って!あの“最果ての地獄”って噂の!?どのみち、死んじまうな」っと。
耳に入ってきた言葉に、あたしと革は思わずゴクッと息を飲み込んだ。“ガトヤ”とは一体どんなところなんだっと。


「!!?」


移動が止まったと思い、顔を前に向ければ目に入ったのは巨大な飛行船のような機体。兵は「浮舟の準備は!」と言えばすぐ出航できますっと他の兵が告げていた。
あたしたちは、牢屋に入ったまま兵に乗せられ「出航」と誰かが叫べば、浮舟っという飛空艇で飛び立った。

グオオオンっと音を響かせ、機体が進路を取れば兵があたしたちの枷を外してくれた。
その兵に“ガトヤ”ついて聞くが「数日で分かる」っと口にして去ってしまう。

押し込まれた部屋は倉庫のようで牢屋からちょうど、窓の景色が見え「ねっ?革、神開の森だよ…」と言えば革も隣に立ってそれを見る。
「あそこに行けたらまた日本に戻れるかな…」と告げるが革は迷ってしまう。

「…帰ったってしょうがないかも知れない。あのときと同じ、また不登校で中学ん時みたく引きこもるしかねえのか?」
膝を付いて崩れ落ちてしまう革を見ることしか出来なくて辛い。「革――っ」っと呟くが彼の耳には届いていないようだ。


「ちくしょう…、門脇も優も十ニ神鞘も!どいつもこいつも…っ!!」
「革、これから何が起こるか分からないから今は寝よう…っ」

言える言葉が見つからなく、やっとでた言葉がコレだった。革が考えなくて済むように、休めるようにっと。

「(…父さん、母さん…、仍…)」

(どうなっちゃうんだろ、あたしたち――…)





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