ナグは着替え終われば、無言のままあたしの手を引っ張った。その行動に胸騒ぎを感じて投げかける。
「ナグ?革なら、きっと何とかしてくれるから一緒に行こっ、ね?」
だけど、首を縦には振ってはくれなかった。横に振るだけで。
ナグは眠った場所に戻ると“白堊”を見てから、あたしの目を強い意志で見つめる。
「……ミツカの母様、見ててほしい。……わがまま言ってごめんね」
あたしは、もう何も言えなかった。分かってしまった。ナグのやろうとする、選んだ道に、あたしは声を押し殺すことしか出来なかった。
ナグは劍神“白堊”を手にし創世に向かう。
「劍神“白堊”…」
ナグの体に腕を回して、あたしは降下の誓言(セイゴン)の言葉を聞いた。後ろからギュッと抱きしめて。
「もう大丈夫。ありがとう、一緒にいてくれて」
その体を抱きしめて、あたしはただただ首を横に振るしかなかった
「大好きだよ、ミツカの母様、アラタの父様と仲良くね……・・―――」
「ナグ―――――っ!!!!」
ナグに言い忘れたことがあったと戻った革は、思いもよらない状況に困惑する。広場に2人の姿がなく、建物の中へと捜せば泣く巳束がいた。しかし、ナグがいない。
劍神“創世”の目の前に座り込む巳束は涙を流している。考えられることはただ一つだった。
「巳束!なんで止めなかった!置いてかないって言ったろ……
ここに居たなら、止められることが出来ただろうが!!なんでだよ」
あたしは、革に問い詰められるが何も言えなかった。ただナグの決断を変えることは出来ないっと思った。その瞳は迷いのない目をしていたから。だから、最後まで見届けた。
革は無造作に置いてあった劍神“創世”を手にとって、いない者の名を口にした。
「ナグ…!!」
あたしは、その場をそっと離れた。
“今、ここに大いなる鞘に降らん ”
“我が生命 ”
“偉大なる劍神と共にあれ―― ”
「アラタの父様、いっぱい遊んでくれてありがとう。一緒に連れてってくれてありがとう―― 」
心強いキミと
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