屋根裏か崩れるように落ちた場所は広場だった。集まってくるオトナたちをカナテが槍で、カンナギが武術で倒していくが一向に減らない。あたしは、子供たちが巻き込まれないように逃げるだけで精一杯だ。

「くっそキリがね!!」
「ミツカ、無事か!?ガキ共を近づけるなよ」
「わかってるっ!」

カンナギの言葉に返すが、中心にいた2人に向かって何人ものオトナたちが降ってくる。どこに居たのか、ものすごい数だ。そして、どのオトナたちも『イイコ』 『イイコ』っと、口にしている。

「なっ…、巳束!カナテ、カンナギ!?」
「革!!」
「…アラタ!劍神を…っ、」

オトナたちに埋もれる隙間からカンナギは劍神を出せと言うが、その光景に茫然と立ち止まってしまう。カンナギが、女性ともいえるオトナから口付けをされているのだ。

「革、見てないで!助けてあげてっ!!」
「早くせんかァァ!!」
「ハ……顕れたまえ!!“創世”!!」


劍神“創世”から眩い光が放たれた。“創世”の光は、今いる島の全てへと広がっていく。
そしてカンナギが目論んだ通りに、そのオトナたちは“創世”の光と共にザア・・・・っと消えていった。革の「“鎮まりたまえ”」の声によって光がおさまる。

「大丈夫か、3人共!今のは…」
「…見ろ、アラタ」

オトナたちから解放されたあたしたちは広場に座り込めば、革が駆け寄ってきた。その姿に、カンナギがこれを見ろと呼ぶ。カンナギが指すものは地面に描かれた、先程までいたオトナたちの絵だった。

「――絵!?」
「そう…“描いたものに魂を吹き込み実体化する”劍神“白堊(ハクア)”の神意――、あの門にあった蔓草も同じだ」
「絵を実体化?それで今の奴らは…」
「あれ?なあ…ここってこんな古かったか?それに…」

カナテは周りの異変に気付く。建物が壊れそうなぐらいに古くなっていることに。あたしとコトハも、先ほどとは違う静けさと周りの変わり様に、目を疑っていた。

「巳束、コトハ、どうした―――」
「……!?」

見渡すかぎりに絵があったのだ。子供の絵が。広場の地面から建物の壁にまで。風に吹かれたかのように消えてゆく。父(トト)様、母(カカ)様と呼ぶ子供たち、遊んでっという子供たちが全て絵だったっということ。

「ねぇ、ナグとナルは!?」
「そうだ!ナグ、ナル、どこだ!!」
「ミツカもアラタも!アイツらも消えたさ!!俺ら“鞘”にだまされたのさ…!!」


ナグとナルの2人を捜そうとあたしと革が動こうとすれば、カナテに止められる。落ちつけと、止められたと同時に背後からググ…っと轟音が聞こえた。
振り向けば、そこにはヨルナミの領地に入ったときに遭遇した不気味な化け物がいる。化け物の足元には、ナグとナルもいた。


「あそこ、ナグとナルが!!」
「待てミツカ!!あれは、劍神!!」
「ナグ…まさか、お前が“鞘”…?」
「“鞘”って、ナグが!?どうして?」
「間違いない、あれは劍神“白堊”!まさか、こんな子供が鞘とは――」
「ナグ!…お前が俺たちをこの島に閉じ込めたのか?子供たちは…あの“オトナ”は?」

ナグが手にしている劍神“白堊”を見て、カンナギが鞘であることを確信する。

あたしと革は困惑するばかりで、ナグへ問いかけようとするが、ナグから出された化け物によって妨げられてしまう。革に向かって、化け物の手が伸びて押し潰されそうになる。
ナルはナグが怖がっていると、逃げて欲しいと口にする。劍神“創世”によってナルの友達を全部消してしまったから。
実体化は、一回描いてしまえばおしまい。消されたら戻らない。


“すごいナグ!友達がこんなにいっぱい!――でもナグの友達は?”
“僕はナルがいるからいい――”


「やめてナグ!あたしはもういいから!」


ナルは必死に止めようとするが、ナグは聞かない。化け物だけでは、革を追い詰めることは出来ず、ナグは大蛇を描いて実体化させた。化け物なみに巨大な大蛇を。
牙をむき出しに襲い掛かってくる大蛇に、カンナギが劍神を使えと叫ぶ。子供とはいえ鞘は鞘、下手すればこちらがやられると。だが、革は自分の劍神を腕へと収めた。

(――――― 革!?)

「ナグ!!ほら!俺はお前と戦う気はない!!」





目の前の真実

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