カンナギには、ただ見ていることしか出来なかった。


これはエミスの運命
このカグツチは火の神の地、この時期の火は天の定め、エミスは火の神に身初められたのだ。
まわりから「その証拠に全て炎に飲まれてしまった」と言われるが、カンナギは受け入れられなかった。


ひとり、エミスの焼かれた高台に行けば カンナギは跪き剣に手を掛けた。


「…応えよ“火の神”…ッ、なぜ!!なぜエミスなんだ…!!どのみち病で永くない俺のこの生命(ミタマ)をくれてやったもの…!!」

剣の刃を、己の首元へ向ければカンナギは自分の意志を口にする。

「…そうだ今すぐ捧げてやる!!火の神よ…“火焔”よ!!彼女と共にいられるなら――――――!!」


その瞬間、カンナギの足元から炎が溢れだす。カンナギに応えるかのように“我は火焔”と告げて。

“その炎の如き慟哭、我が鞘にふさわしい――――――”


「劍神…“火焔”!!」

カンナギの前に、現れたのは劍神 “火焔”だった。火焔は、カンナギの鞘へと治まった。



 * * *



「そう…俺は女を見殺しに、その引き替えに鞘となり、今も生き永らえている。火は俺にとってエミスそのもの―――――」

(カンナギはずっと炎の中に、二度と戻らないエミスさんを見ている。劍神 “火焔”はカンナギに無くてはならない……)

「だから必ず“火焔”はアカチから取り返す!!あれの鞘は俺だ―――――――!!」


カンナギの話を聞いて「――あんたの話は分かった!!でも秘女王を斬っていい理由にならない!俺の劍神も渡さない!!」と革が口にする。
革は思い出していた、全鞘神を束ね“相手の心を変え、その生命(ミタマ)を預かるんだ”っと言われたことを。つまり、目の前にいるカンナギやあのアカチも変えること。
学校のときのように“嫌な奴”だからと無視することでなく、向き合うこと。それがこれからの、革自身の戦い―――――


「革?」
「巳束、決めたから」
「……うん、」

革はカンナギの元に立てば「…どのみち俺もアカチに会いに行かなきゃならない。なら、俺と一緒に来いカンナギ!」と告げた。
その言葉にカンナギが革を見上げれば、いつの間にか雨が止んでいた。


「“火焔”も取り返す。
 …お前も、俺と一緒に世界を変えるんだ!」







 * * *


アカチもカンナギ、同様に何かに捕らわれていた。今、手にある“火焔”を前にカンナギは必ず取り返しに来るはずっと口にする。「奴を“降す”のが俺の積年の願い――――」っと。
まだ使うことが出来ない“火焔”に神意を告げて。いずれ、自分のものになると。だが、アカチには気になることがあった。


「―――“アラタ”。あのときは引いてやったが、あの小僧と劍神…ただ者ではない。ほかの十ニ神鞘が知れば…どう動くか―――――」




その者への想い

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