カンナギは右肩を押さえながら、火の中にいる巳束をある人物と重ねていた。燃え上がる炎の中、聞こえてくる“ カンナギ… ”と己を呼ぶ声に。「 …“エミス”!!」っと口にする。


「手を伸ばせ、巳束っ……!!」

炎を突き進んできた革に手を伸ばそうとした瞬間、カンナギが革と巳束を抱え炎の無い場所へ飛び出していた。その状況にあたしと革が声をあげる。


「え…カンナギ?」

「な、なんで…」


だが、カンナギは何も言わない。ただ右肩を押さえ「ぐ…あッ…」と口にし、崩れてしまう。
命を狙われているのは確かだったが、カンナギはあたしと革を助けてくれた。そして、右肩を押さえ倒れ込んだことも気になり火の無い場所へと移動をした。気を失っているカンナギの肩の鎧を外せば、ひどい火傷があった。


「…火傷!?なんで、だってさっき炎の中でも平気で―――」
「コトハ、治癒力は?」

コトハはあたしの言葉にコクンと頷き、手を翳すが「ダメです、古い傷で私の治癒力が効きません」と告げる。炎はカンナギを護り決して傷つけないと言っていた。だが、カンナギの肩にあるのは火傷の痕。
この右肩がアカチが言っていた“失う苦しみは永劫続くのだ、カンナギ!!その右肩に刻まれた“罪”もな―――――”ことに関係しているのは確かだった。

「精神的なものかしら」
「コトハちゃん!高台でさっき取ってきた薬草(チヨミクサ)は?」

カナテから薬草を受け取れば「やってみる!」と石で潰し始めた。フッと気付いたカンナギに「カンナギ?」っとあたしが声を掛ければ「エミス…ッ!?」と口にし起き上がる。

「わっ、」

いきなり起き上がったことに革が驚けば、カンナギはあたしとコトハを見てハッとなる。「カンナギ…平気か?右肩…」と告げる革の言葉に、肩を露わにされてしまったことに気付く。


「き・さ・ま〜〜〜〜〜ッ!!」

革の頬を片手で挟み「よくも、勝手に…!!」と声をあげる。

「いていてっ!!」
「ちょ、革は傷の具合を心配しただけでしょ!?」

止まらないカンナギに声を掛けるが、止めようとしない。革は、その痛さに手をバタつかせていた。


「あ、大変っさ!あんな高台まで火が起こりやがったさ、早くここを離れるべきだって!!」


カナテのいう高台にカンナギが顔を向ければ「あそこは…」と顔色が変わる。捕まえていた革をベッと離し「エミス!!」っと、声をあげて走り出してしまう。
その焦り様に「あそこに、何かあるの?」っと呟けば、カナテが「なにって、墓がひとつ…」と口にした。



崖を越えて、燃え行く高台に上がればカンナギは墓石の元へ走った。

「エミス…」

だが その炎は全てを包み、墓石は カンナギの前で崩れていった。崩れゆく墓石の前で、カンナギは跪き何も出来ないことにただ耐えるしかなかった。


思い浮かべるのは、その者の微笑む姿だった。


誰かが泣いているのを誤魔化すかのように、雨が降り始める。
カンナギを追って高台へと着けば急に降りだした雨が炎を消していた。雨の中、カンナギは墓石の燃え跡の前で跪いていた。


「「カンナギ!?」」


「エミス…“火焔”…劍神があれば…“あのとき”も――――」
「“エミス”って…?」

エミス、そして“あのとき”というカンナギの言葉をあたしと革は待った。


 * * *


その者との出会いが、語られるのはまだ先なのかもしれない。


罪人の親の死後、それに代わって罪を担う「罪科奴隷」制度に縛られ、領主の死、国が荒れ“ハニヤス”から逃げるようにカンナギとエミスは、この領土(カグツチ)に渡ってきた。
風土病になったカンナギは病に倒れてしまう。その側には、エミスがいた。また、病に土地の者が“あと2日高熱が続けばもう―――”と告げていた。だが、エミスは諦めることはしなかった。

「“長寿の薬草”…チヨミクサを取ってくるわ、カンナギ!」
「…?あれはガケ…高台にしか―――」
「大丈夫よ、待ってて!」
「だめだ…エミス、危な…っ…」

高熱に耐えながらエミスを止めるが、カンナギのためにと高台に咲く薬草を取りに行ってしまう。そして地脈の活性化により“自然発火”が多発し、その炎が高台で起こってしまう。
それは、エミスが薬草を取りに行くと告げていた高台だった。カンナギが行ったときには、一面に火が燃え広がっていた。


「エミス―――!!」
「カンナギ…!?来てはだめ―――!!」

炎の中にエミスがいることに近付こうするが、飛び火が右肩の服に点いてしまう。

「バカ!!お前も焼け死にたいのか!!」

カンナギはそれでも、その火に向かおうとしたが土地の者たちに押さえられてしまう。


「放…せっ…!!…エミ…ス
 エミス―――――――ッ…!!」






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