お題



いつかの夢。


「「なに笑ってんだ、置いてくぞ」」



それはあの頃のように、二人揃ってその手を差し出してくれる夢。
また、笑い合えたらいいのに。二人は同じ道を走ることを止め、違う道を走り出してしまった。
今は、剣を交えお互いを憎もうとしている。




 * * *




「……―――――」


「おーい、巳束。授業、終わってんぞ」



その声と一緒に振動が伝わって、重たい瞼が開けばいつもの革と門脇が映る。「……あれ?二人して何してんの」っと呟けば、まだハッキリしない頭を小突かれてしまう。

「お前が、授業終わったら迎えに来いって言ったんだろうが」
「門脇、そう言うなって
 巳束、すっごい跡付いてんぞ。そこ?」


革があたしの顔を指差せば、隣にいる門脇も覗きこんで「お!ホントだ」と笑ってくる。革も一緒に「だろ?」と言って、腹を抱え込む始末。
急いで鞄から鏡で覗きこめば、顔に赤く跡が残っていたが笑うほどではないはずだ。


「そもそも、革が大げさに言わなければいいじゃん!」

「俺は教えただけだ。っというか、顔に跡付けるほど寝るなって」

「確かに、すぐに起きなかったけどなんか夢でも見てたのか?」


夢?そうか、今までのは夢か。
霧のような靄が頭を支配されているような感じだったが「夢」という言葉で、晴れたようなすっきりとした気分となった。


「そう、なんか凄い壮大かつ途方もない夢を見ていたんだよ」

「ふーん、凄い壮大かつ途方もない夢ねぇ」

「それに、俺と門脇は出ていたりすんのか?」

言葉で表すには難しいというか、とてつもないこと「うん、なんか……こことは真逆で正反対の途方もないことで」と口にすれば、二人揃って「「意味分かんねぇ」」っと笑う。
その革と門脇の笑う姿に安心し「いいんだよ、意味分かんなくても」っと笑うように口にすれば「そう?“ ほら、笑ってないで行くぞ ”」と告げられる。




何かが違うことに、違和感を感じた。革と門脇はあたしの前を肩を並べて歩いてる。



「巳束?」




二人に名前を呼ばれても虚しさを感じた。
そっか、昔の記憶と夢と現実がごっちゃになってんだ。



(あの頃に戻ってくれれば……)



夢を終わらすために、その声の元にあたしは、ただ走った。
“なに笑ってんだ、置いてくぞ”は、あの頃の二人が笑いながら言った言葉


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