お題
夏休みが始まれば、いっぱい遊べるかと思いきや残念ながらほとんどが部活だ。
そんな夏休みの中で部活が休みなり、仍ちゃんと遊ぶことが出来ていなかったので夏祭りへ行くことになった。
結構な人の多さで、仍ちゃんを見つけられるかなっと思っていれば「巳束ちゃ――ん!!」っと呼ぶ声が聞こえてくる。
「巳束ちゃん!こっち、こっち」
「仍ちゃん、お待たせ!…って、あれ?革も」
神社の境内などに縁日の屋台が出ているとのことで入口で待ち合わせれば、仍ちゃんと一緒に革も居る。
不思議な顔をしていれば「巳束、俺がいたらいけないのか?」と呟かれる。
「違う、違う、仍ちゃんと二人だと思ったから吃驚しただけだよ」
「ごめんね!巳束ちゃん、お兄ちゃんも暇してたから連れて来ちゃった」
「暇って、お前が連れ出して来たんだろう…」
最後まで喋る切る前に、仍ちゃんからバシッと背中を叩かれ革は咽ていた。
立ち話も何だから、行こうっという話になれば仍ちゃんが何か革に耳打ちをしている。「おいっ、仍!?」っと革が言っていたが、仍ちゃんはあたしの腕を取り「何、食べましょうか?」と口にした。
「仍ちゃん、カステラ焼きあるよ!次、アレにする?」
「いいですね、行きましょう」
「おーい。お前らさっき、焼きそばにたこ焼き食っただろうが」
「だから、次は甘いものにするんでしょ」
「そうだよ、お兄ちゃん分かってないなぁ―っ」
「分からないって、どんだけ食うんだよ」
巳束と仍に言うが、すでに二人はベビーカステラの列に並んでしまって聞いていないようだ。「は―――っ」と溜め息を吐けば、二人が満足そうに出来たてのカステラを頬張りながら戻ってくる。
「なんか、革?疲れてる」
「お兄ちゃん、疲れには甘いものがいいけど食べる?」
仍ちゃんが手に持っていた紙コップを革へと向けるが「いや、お前らの食欲に感心しているだけだよ」と告げて、あたしが食べようとしていたカステラを横からパクっと食べてしまう。
「ちょっと、革!あたしの、食べなくても!!」
「そう怒るなって、仍のからひとつやるから」
そう言って、革は仍ちゃんのコップからひとつ摘まんであたしのコップに移すが「ごちそうさまでーす」っと仍ちゃんが口にする。
お腹一杯なのかっと思えば違うようで、あたしと革を次の店へと引っ張っていく。革はすでに限界と言っていたが、そろそろあたしも限界。
「仍ちゃん!革!金魚すくいやらない?」
目に入った金魚すくいの文字にひとり足を進めれば、いつの間にか二人の姿が居なくなっている。
「あれっ」と呟けば、後ろから来た人たちに打つかってしまう。すいませんっと謝れば、人の流れが出来てしまっていたので出店と出店の脇に移動することにした。
「とりあえず、電話すればいっか」
電話帳から仍ちゃんの番号を出して、発信を押すが一向に繋がらない。機械音が聞こえていたがプチっと切れてしまった。画面を見れば、充電切れの表示だ。
いつ逸れてしまったんだろうか。来た道を戻るべきか、この場所で二人が通るの待った方が良いか悩んでいれば「巳束―――っ!!」と呼ぶ声が聞こえてくる。
「……革?」
「ったく、いまどき迷子って子どもかよ」
息を切らしながら「…お前、携帯、なんで繋がって無いんだよ」と口にする。「ごめん、充電切れた」と呟けば頭を小突かれる。革が携帯を取り出し、仍ちゃんに連絡を入れるから少し待っていろのことだ。
「仍、見つかった…ああ、分かった。ったく、じゃあな」
電話での革が意外に、素っ気ない態度で「どうしたの?」と聞けば「友達と合流したから、あとはヨロシク!だと」っと革に告げられる。
「そっかぁー、友達に会っちゃたら合流しちゃうよね」
「しょうがないから、行くか」
「えッ?」
「花火、早く行かないと場所無くなんぞ」
花火がこれから上がるのは知っていた。それなりに結構な人が祭りに来ていて、早く見やすい場所に行かないと場所が無くなってしまうのも分かる。
「えっと…その、革、なんで手っ?」
革は先程から、あたしに向けて手を差し出しているのだ。戸惑うあたしに「お、お前、今携帯の充電が切れてんだから!迷子になると面倒だし」っと口にする。
「で、でも、大丈夫だよ」
「何でもいいから!ほら、手、繋いどけよ」
頭をガシガシと掻けば、革から手を握られる。その手の体温は、逸れて心細かったのか少し冷たくなったあたしの手には心地よいもの。
革の顔を覗こうとするが、反らされていて見ることが出来なかったが「心配させんな、ばかっ」と呟かれ強く握られた。
「うん、」
二人の顔は夜空に、咲く花の色と同じだった。
“手、繋いでないと不安だから…ほら、手、繋いどけよ”っていえねえ
(少し予定が狂っちゃたっけど、お兄ちゃんうまくやってるかな?)
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