お題



「ねえ、巳束ちゃんって……よく門脇くんと話しているけど怖くないの?」

「へ?何、それ」

部活の準備をして教室を出ようとすれば、数人の女の子に声を掛けられる。
そのうちの女の子が「ほらっ、日ノ原くんと一緒に話してるの見て」や「カッコいいんだけど、話しかけにくいっていうか」と告げてくる。


「あぁ、気になるんだね?」

カッコいい分類であるため、ときどき女の子たちの話題になっていたことがあったのを思い出す。話しかけにくっということは、裏を返せば“話をしてみたい”ということだ。
あたしの言葉に反応して、最後に声を掛けてきた女の子が「ち、ちがうの…」っと口籠ってしまう。

「この間、門脇くんの落し物を拾ったんだけどちょっと…」
「この子と一緒にいたんだけど、無愛想でね」
「そうそう、ちょっと怖くて」

「大丈夫だよ、中身はその辺の男の子と一緒だって」

革と同じ中身なんだよっと、思い出し笑いをしそうになった。それを聞いて、女の子が安心したのか「そっか!ありがとう」と口にする。
周りの女の子たちも同じように、ありがとうと告げて教室の席へと戻っていった。



 * * *



「お疲れさまでした!!!」



部活が終われば、帰り支度となるがその前に使ったものを片付けなくてはならない。
最後の最後で目が合ったという理由により、先生から「ライン引きを片付けておいて」と言われてしまう。
断る理由もなかったので「はーい」っと口にしたが、それを後悔した。ストッパーが外れやすいからっと転がさずに持ち運べよと言われたからだ。
しかもライン引きで使ったはずなのにラインカーの中に、石灰パウダーがきっちりと入っていたのだ。


「あー、これ本当に使ったの?」

両手で持ち上げ、その重さにふら付きそうになりながら歩けば後ろから声をかけられる。

「巳束!」

その声に振り向けば、門脇が「貸せっ」と言いながらあたしからラインカーを奪い取った。そして、門脇は体育倉庫へと足を向ける。


「ありがと!」
「別に大したことじゃねえ」

隣を歩く門脇に告げれば、素っ気ない言葉で返される。素っ気ないなのは、照れ隠しだっていうことは分かっていた。

少し前を歩き始めた門脇に、今日の女の子たちに聞かれたことを思い出してそれを踏まえて告げる。

「もう少し、言葉足らずっていうか…愛想よく言えばいいのに」
「は?巳束、俺にそんなの求めてんのか?」
「違う、違う、今日女の子たちが言っていたからさ」

そんなことを話していれば、いつの間にか体育倉庫に到着。門脇は「ふ――んっ」と興味無さそうに言いながら、扉を開けていた。
まぁ、本人がいいなら別にいいのだが。



「別にいいよ。言葉足らずかもしれねえけど
 お前に、伝わっているなら」

わざと大きな音を立てながら、ラインカーを置くのと同時にボソッと小声で呟いた。
だから、後ろにいた巳束には、届いてはいない。今はそれでいい。


「ん?何か言った?」

「何も、言ってねぇよ」





言葉足らずかもしれねえけど、伝えたい相手に伝わっているならそれでいい

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