「コトハ、足大丈夫!?」

「え、さっきの戦いで!?」

「巳束さんも、アラタ様も薬ぬったし、平気です!」

「けっこー、えぐれてたさ!」

足を庇うコトハに近付けば、右足首に包帯が巻かれていたことに気がつく。「采女族の治癒力って自分のケガは治せないんだと!」っと言うカナテの言葉に、あたしは自分の傷のあった手を隠した。

「(コトハの足…“鞘”の俺と一緒にいると、これからは危険なんだ。もしかしたら…)」


カナテが「これ…オヒカさんが持たせてくれた食いもん分けたから。…食欲ねェけどさ」っと言って革とあたしに、それを差し出した。

(オヒカさん…)


あたしたちは、それを口にし木の葉に眠りにつくため横になった。あたしと革は皆の眠りを待つため、横になっただけだった。

「やっと眠ったよ、カナテたち」
「そうだな。カナテ、悪いけど地図借りるぞ」
「皆を、巻き込めないもんね」
「ああ、そうだな…。鞘がいなきゃ誰も来ないはずだから」

朝日が昇る前にコトハ、カナテとホニを残して、そっとその場を後にした。

「巳束、今は食べておけ」
「あ、うん…」

どこまでも続く沼に、丸い石が幾つも続いている道があってあたしたちはそこを歩き、先へと足を進めていた。


「ごめん、巳束を巻き込んで…お前もコトハたちと」
革の言おうとした言葉を遮るように「巻き込まれたなんて、思わないって言ったはずだよ。それ以上、言ったらいくらなんでも許せないよ」っと口にする。
頭をグシャっとさせ「行くか、巳束」っと告げて、革は背を向けた。だが、あたしは遠くから聞こえてくる声に足を止めてしまう。

「アラタ様――!!」

追いかけてくるコトハに気付けば、革はあたしの手を取り「急ごう」っと急ぎ足になる。
コトハが沼に嵌っていることに気付き「革、待っ」と口にしようとしたが、それよりも先に革はコトハの元に駆け出した。あたしの手を振りほどいて。


「落ちちゃいまいた!」
「コトハ、なにしてンだーっ!?ほら上がれ!ケガしてんのになんで来るんだよ!」
「だって…」
「俺といたら危ないんだ!采女族だからムリヤリついてくる必要ないんだ!」


革とコトハの側へと行こうとしたが、足が止まってしまう。足が地面にへばり付いているようで動かなかった。ただ動いたのは、一粒の涙だけ。
何を言っているかは、分からなかった。だけど、コトハが革にとび付くようにキスをするところが見えてしまった。

胸にチクっと、棘が刺さったかのように痛みが走った。


「危険でもいい…一緒に行く!!あなたのそばにいられれば…私…!離れたくない、…なんで、わかってくれないの……」


コトハの言動、そして押し倒されいる状況に鼓動が高鳴れば、革は手を回しそうになった。


「オラァ!俺を出し抜くなんざ、一億年早えぞアラタ!」

カナテは革の顔の横に槍を突き刺せば、顔をあげ「ミツカ―――!!お前も何そんなとこで突っ立てるさー!」と声をあげた。
その声に、気付かれないように流れた頬を服で擦った。


「あぁ、ごめんごめん!」


気付かれないように笑って駆け寄った。だけど、革とコトハの顔を見ることは出来なかった。





それは、ハジメテノ

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