降れっと告げたアカチに、迫られた状況。
オヒカは「大王の座を望むか…アカチ様!しかし、なぜ私なぞ―――!!」っと口にすれば「自分が“カンナギの属鞘”であることを恨め」っと、アカチが言った。


「妻に子が出来たそうだな。“降る”か“全員死ぬ”か、考える余地はないのではないか?」

「オヒカ…っ」


革は止めなきゃっと自分の手の平から劍神を取り出そうとし、あたしは何も出来ない状況に、ただ自分の拳を強く握りしめていた。
オヒカは、アカチ越しにある帳の隙間に劍神を構えようとしている革に気付き、一度目を伏せた。逃げなかったのか、鞘 “アラタ”っと。
そして、何かを伝えようと目をそのまま向ける。革は、オヒカの意に気付き劍神を手に収めた。


「さあどうする、鞘“オヒカ”」

「申し訳ございません…!カンナギ様!」


忠誠を使うカンナギに詫びの言葉を言うオヒカに「ハッ…俺に降ることを誇りに思うがいい…、大王となるのは我なり」っとアカチは言う。「どうしたオヒカ、妻と子…侍女たちを助けたいのだろう」っと。

「降ります…アカチ様!ですから、皆の命は―――」

オヒカは、自分の腕から劍神を取り出そうとする。思わず叫びそうになったホニを、コトハが手で押さえた。あたしたちは、それを見ていることしか出来ない。

取りだした劍神を握り、自分の手の平を刃の下からかざす様に「“劍神・鍛冶(カネリ)”」っと口にする。


「あなた…」

「“今、ここに大いなる鞘に降らん”」


鍛冶(カネリ)が光だす。その光がオヒカを纏っていく「“我が生命(ミタマ)、偉大なる劍神と共にあれ”――」っと告げた瞬間、光となりアカチの劍神にある球体の宝玉へと吸い込まれていった。


(……、オヒカさ、ん…)

「あなたっ…!!」


フヨウの叫び声に「叫び声が聞こえましたが、なにかございましたか!!」っと屋敷の者たちが集まってくるが「―――うるさい」っとアカチの一言で、その者たちの命が尽きてしまった。
帳の布に次々と赤い血が、飛び散っていく。部屋の中には侍女たちの泣き叫ぶ声が、響く。そして、また血がジワ…っと布へ飛び散り広がって。

「オヒ……カ…」

布にバッと飛び散った血。カクンっと小さな音が、微かだが耳に届いた。
赤に染まった布、それは殺戮を表していた。あたしたちは、恐怖に震えあがった。


「(…なんでさっき、オヒカさんが俺を止めたのか分かった)」


勝てる相手じゃない、この布の向こうにいるのは――― “鬼”


「「!!」」

足元から何かが押し上げてくる感覚に気付き、革はそのまま横に、あたしは後ろへと避ければ床を破り剣が突き上げた。
剣は、そのまま革へと追い掛けるように何本も突き上げてくる。一定の距離まで行った革は息を上げ片膝を着いていたが、攻撃が止んだことに攻撃範囲があるのか!と脳裏に過った。
その時だった、部屋に響く音が届く。



「アカチ――――ッ!!」



カンナギが浮舟から、その名を叫んでいた。アカチの周りには、カンナギから「火焔」が放たれていたが微動だにもしていなかった。


「…ようやく帰ったか、カンナギ!あの“アラタ”というガキを追いかけるのは飽きたのか?」


目の前に広がる惨状の中にフヨウの変わり果てた姿。カンナギは、オヒカに寄り添う姿を思い出す。「フヨウ…、…今、子と共に俺の“火焔”で送ってやる――!!」っと口にして。



「…家が燃える!!巳束、皆を早く!!外へ!!」

「ホニ、早く!」
「奥様っ…!!」





優しさと目の前の悲しみ

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