オヒカの質問に何も言えず、空気が張り詰めそうになれば慌ただしい足音が聞こえてくる。
帳が揺れ「…オヒカ様!!ただいま門番から連絡が!十二神鞘のアカチ様が、オヒカ様にお会いしたいと――」っと、侍女から声を掛けられる。

「(アカチ!?)」
(十二神鞘の1人って、もしかして“裁判”のときの?)

アカチ様がなぜここへっと、悩みながらも客間にお通ししろっとオヒカは告げる。
「アラタ…、今の“新しい鞘”の話だが、ツツガが自分から降った相手なら秘女王殺しの罪人であるわけがないな。きっとその少年の側にいたという少女も」

ツツガはもともと実直で、本質を見極める「審判者」。その少年はきっと「生命を託していい」ほどの人間なのだろうっと告げ「これから、そう成長するかもしれないが――」っと言った。

「では、」
「あっ…いろいろありがとうございました!」
「あの、オヒカさんもフヨウさんも、ありがとうございました!」


2人は一緒に笑みを落とし部屋を去れば「あれ以上、つっこまれたら“犯人はカンナギ”って言うとこだったさ!」っと、カナテは呟く。
革は「そんなのダメだ」と言い「あの人はカンナギを信じているんだ。だいいち証拠がない。それより、カンナギとグルで秘女王殺害を企てたアカチがなんで…?」っと口にする。
その会話に「革、カナテに話を」っと革に聞けば「あぁ、したよ」っと告げた。

その言葉にあたしは「そっか、よかった」っと小さな声で呟く。それは、心から信頼できる証拠だっと思ったから。
お粥を持っていたカナテが「ほら、食べるさ」っと革に渡すので「そうだよ!とにかく革、食べて着替えないと」と革の衣服を渡した。



「アラタ様」

食事と着替えを済ませた頃、帳の布がバサッと開かれコトハとホニが現れた。

「コトハ!」
「よかった、起き上がれるようになったんですね!」
「まだちょっと頼りないけどな」

ホニはあたしと、カナテに「コレ!」っと言って袋を差し出し「4人でしばらく持つ分の食料だよ」っと口にする。

「オヒカ様からの命令だ、“今すぐここを離れて遠くに行くように”って!さ、早く乗り物なら…」
「ちょっと待って、一体どうして!?」
「確かに、それってオヒカさん、アカチとなにかあるんじゃ…!」


 * * *


急ぎの用件をホニに頼んだあと、オヒカは客間にいるアカチの元へと向かっていた。
アカチは、外の景色を眺めながら、いい土地を貰っているなっと「ほかの属鞘よりお前はカンナギに見込まれてるようだ。鞘“オヒカ”」っと告げていた。
客間にいるアカチと対面して座れば「…私になんの御用です、アカチ様」っとオヒカが口にする。「十二神鞘カンナギ様を通されず、直接お越しになられるとは…いったい?」っと。

それをあたしたちは、帳の布と布の間から覗き見ていた。
食い入るように見ているあたしたちに「アラタ、巳束、逃げなくて…」っとカナテは言うが「「シッ!」」っと告げる。アカチが何かを起こすのかも知れないっと思っていたからだ。

「なに…忠実な属鞘のお前に重大な真実を伝えに来たのだ。この度の秘女王殺しを画策したのは、カンナギ――」

「「!!」」

「あいつは永きの秘女王の忠誠を裏切り、自ら大王になろうと目論んだらしい」
「そんなバカな!!」

信じられないっという顔のオヒカに「そのため利用した秘女族の少年とその共犯者を、口封じに今も奔走し領地(ココ)に戻らんのだ」っと告げる。実際に、カンナギは領土(カグツチ)にいないため、オヒカは返答が返せない。


「俺の属鞘となれ、オヒカ。
 お前も忠誠を立てる相手を考えるべきだ。国家の裏切り者 カンナギを共に倒そうではないか―――」

「(アカチ…カンナギを裏切るのか!!)」

「……私は…
 そのような話は信じません!!」


力強く告げた言葉に付け足すように「それに私は、鞘とてただの鍛冶屋(カネリト)。道具は造れど、戦いには不向き…力添えにはなれません」っと、きっぱりと断りを示した。
「…まったく、」っとアカチが呟き、手を自分の胸元へと持ってくれば、ズオッと刃の先が出てくる。

「劍神…!!」
「“どいつも”“こいつも”それか。カンナギも意外に信用があるとみえる」

アカチは、槍のような形状の劍神を手に持ち「…笑わせるな、あの“人殺し”が―――」っと口にし「顕れたまえ」っと、床にドッと突き刺す。
屋敷の建物が大きく揺れ「“地龍(オコロ)”!!」と告げた瞬間、ドンッと幾つもの土の剣が地面から、床を突き上げ出てくる。


「(地面から剣が!?)」

(え!?フヨウさん!!!)

伸びていく剣が、ギュンっとフヨウの周りに集まって四方を囲んでしまっていた。それも一瞬の出来事で、剣先はその喉を差している。あたしたち以外の部屋にいる全員が、アカチの神意で狙われていた。
フヨウや侍女の叫び声に「やめろ!!妻や侍女たちには…」っとオヒカが口にすれば「家族を助けたくば オヒカ、俺に“降れ”」っとアカチが告げる。


「「!!」」


アカチの“降れ”の言葉にあたしたちは、オヒカの言っていたことを思い出す。降るということは、劍神共々自分の生命(ミタマ)をすべて相手に託すこと。


“大王になるには全劍神を統一 ―――”





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