カンナギの言葉と同時に体が動いていた、革に覆い被さるように。考えるよりも先に。
一瞬だが、あたしの周りが光ったような気がした。
「な!!もしやっ――」とマカリは口にする。そして、カンナギも。

革は「火!?」っと告げる。革が言うように、カンナギの剣から火が放たれたのだ。あたしや革が無傷でいることに、カンナギの顔が「くっ」と強張る。

コトハが今のは神意(カムイ)と言い「そうか、秘女王がお倒れになったから、全神々の封印が解けてしまったんだ――!!」と、あたしたちに逃げるように声を上げる。



(なにか、何か、せめて対抗できるものは――)

ドクンっと何かに共鳴するよう鼓動が跳ねる。その気配に顔を向ければ“剣”があることに気付く。手で拾えば、またドクンっとする。分からないけど、今はこれを革に。


「革、受け取って!」
「巳束!?え、剣っ?」


剣を投げれば、手に吸い込まれるよう革は受け取る。それと同時にドッドッドッと強く光だしたのだ。革は「な、なんだよこれ!?」というが周り者が「まさかっ」と口にする。
「あんなボロが劍神のわけがない――」とカンナギが言えば、それを試すように周りの兵士にも行けっと指示を出す。

振りかざされる剣に応戦する革。「革、ひとりに対してよってたかってっ!」とあたしが呟けば「いいかげんにっしろっ!!」と革が声を上げた。

兵士の刃が折れ、頭上へと跳べばカンナギはそれを燃やす。ガキの分際で頑張るじゃないかっと言えば、だがここまでだっと終わりを宣言する。それは古びた剣に過ぎんっと。

「たとえ劍神だとしても、操れる者は選ばれた人間のみ――、俺のようにな」
「ハヤガミ?」

カンナギの言った言葉、革同様に何のことだ?と頭を過る。ただ考える余裕はない。彼は「死ね!!」っと革に言っているのだ。何か無いのだろうかっと、その時だった。


「革、唱えよ!!“顕れたまえ”!!」


マカリは告げれば、革が「“顕れたまえ”!?」っと口にした。

剣がフォっとより強い光を放てば、カンナギからの炎を避けたのだ。周りを避けるように、それは風を起こしているかのようだ。
「な、なんだ!?」と革は目の前で起きていることに驚きを隠せない。カンナギは兵士に「カンナギ様!!」と言われ「“鎮まりたまえ”!!」と口にする。
その声に、炎が消える。「貴様、そうか…」と呟けば、ならば今は殺さんっとカンナギは言う。

「今はな…これですむと思うな、アラタ!!そして女っ、お前もだ!!」

カンナギはそう言い残せば、兵を引き去ってしまう。ただ、その対象にあたしも、なぜか含まれていたのだ。だが、革の周りは先程と同じ状況だ。

「いや、捨てゼリフ決められても…これどうしたら――!?」

「革!!“鎮まりたまえ”だ!!」

「し…!?“鎮まりたまえ”」

先ほどと同じように革が叫べば、ヒュっと現象が治まったのだ。
革は剣を見て「おさまっ…」とホッとしようとしたが「よし外、出るぞ!!」っとマカリが避難するようにと促す。思わずその言葉に「え?」と言えば「崩れる!」と声を上げた。


カンナギは引いた兵士に、近場で待機することを命じていた。カンナギは今し方のことを思い出していた。
「(なんなんだあいつは!?それにあの女はっ。そしてあの剣…劍神だとしたら、あの神意の属性さえ分からん。今は目覚めていないようだが)」
もしかしたら、新たな劍神が顕れたのかも知れない。だとしたら、あいつは――っ!!そしてあの女の力はもしや――っ!!と。


外に避難したあたしたちは、マカリに質問をされていた。

「そなたたちは何者だと、言ったのだ」
「なにって…」

革が答えようとすれば「ちょっと記憶のおかしいアラタ様です」っと、コトハが言う。

「コトハさん、それ違う。革だからっ」
「そう、人違いだから!」

マカリはコトハが居ては話が進まないっと思い「水、持っといで」と頼み、その場から離れさせた。


革は剣を持って「この剣、いったいなんなんですか?」と質問をすれば、代々伝わる御神体であり“劍神”と呼ばれていることを教えられる。

「劍神…?ってコレ、神様なんですか?」
「そう――、この世界の神々は全ての劍の形をしておる。さっきのカンナギという男の劍もそのひとつ」

そして劍の力を言う。神意というもので、大いなる神の力。
カンナギの劍神は「火焔」といい、名のとおり「火の神」のこと。そこまで聞けば、革にひとつの疑問が生まれる。


「ちょっと、待ってください!なんで僕がこれを使えたんですか!?」

「どうやら、そなたはその劍神に選ばれたようだ。“鞘”として」

「革が、鞘?」




 * * *


革と巳束が路地へと迷い込み、流れ崩れ落ちたのと同じころ、秘女族のアラタも“神開の森”に喰われ現代に、迷い込んでしまっていた。
見たこともない景色、建物、人に驚きが隠せない。そして“十ニ神鞘が秘女王を裏切ったこと”を祖母のマカリとコトハに伝えなくてはいけないっと叫んでいた。
不審者として警官に取り押さえられているところに革の妹、仍が救う。だが、仍の目にもアラタは実の兄“革”として映っていたのだ。





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