ハルと同じで、大切な幼馴染み。大切な仲間。今は、それでもいい。でも、いつかは――――。
「――送らなくても、大丈夫だったのに」
11月17日、遙の家で行なった真琴の誕生日祝い。鍋を囲んで、ケーキを食べてお腹いっぱいになって時間はあっという間に過ぎてしまう。
遙は片付けがあるから見送りが出来ない。渚と怜の二人と一緒に帰るから、と言って樹は見送りはいいと断ったが、家まで送ることを真琴は譲らなかった。
「駅まで渚と怜を見送ったら、樹ちゃんが一人になるでしょ?」
駅からの帰り道、二人は渚と怜の二人を見送って漁港沿いを歩いていた。
「そうだけど……真琴は誕生日なんだから、気を使わなくても」
「いいんだよ。そこは」
頬を掻きながら、真琴は笑う。
「うーん、あ!ねえ、何か欲しいものある?」
「え?だって、もう貰ってるし」
樹は、なんだかんだでお世話になっている真琴へ何かお礼がしたいと考える。それは、誕生日プレゼントは別として。
「…来年の分の、リサーチかな」
「もう来年って、樹ちゃん 早すぎない?」
樹の家まであと僅かのところで、真琴の足が止まる。
どうかしたのかと疑問に思った樹が真琴の名前を呼べば、目と目が重なり合った。
「欲しいものだよねっ……これからも、ずっと樹ちゃんに祝って欲しい」
本当は、樹ちゃんが欲しい―――。
「そんなの、当たり前だよ。来年も再来年も、真琴の誕生日を祝うよ」
「うん、ありがとう」
その笑顔を困らせたくない。だけど、我慢も出来ないんだ。
真琴は樹の腕を掴んで、自分の腕の中へと閉じ込めた。腕の中にいる樹は、首を傾げて戸惑いがちに自分の名前を呼ぶ。だが、真琴は抱きしめている腕に力を込めた。
「今日だけでいいから、我儘言っていいかな?」
「我儘?真琴の誕生日なんだから、私が叶えられるものならいいよ」
「樹ちゃん、好きだよ」
「っ!?、」
真剣な声色に、樹は顔を上げることは出来なかった。樹は、真琴に包み込まれる感覚に鼓動が高鳴っていく。
「俺のことどう思っているか、教えて?」
「ま、真琴は、私の大切な―――」
言おうとすれば、最後まで言い切る前にチュッとリップ音と共に柔らかいものが額に触れて、言葉を遮ってしまう。それが離れると、真琴の唇が触れたいたことに気付く。
「今は、それだけで十分かな」
八の字眉を下げてやんわりと笑う。その顔はどこか寂そうな表情でもあった。あまり見ない真琴の表情に、樹は戸惑ってしまう。
「なっ!真琴、今ってどういう意味!?」
「今は今だよ。樹ちゃん」
真琴は歩きながら笑っている。額に手を当てながら、真琴の隣を歩けば顔の前に手を広げられる。
「お手を、どうぞ?」
「何?どうしたの、真琴」
「俺、我儘言っていいんだよね」
「うん」
樹の押さえていた手を真琴は「じゃあ、」と口にして、自分の手と重ね合わせた。
「手、繋ぎたいから。…いいよね、俺の誕生日だし」
真琴の手と顔を交互に見て「しょうがないなっ」と笑う樹に、海を見ながら小さな声で真琴は呟いていた。
「……来年は“好き”って言って」
来年も再来年も、隣に君がいてくれればいい。自分の本心。そして誕生日だからか、欲張りになってしまう自分に真琴は笑っていた。
“いつか、伝わればいい”
HAPPY BIRTHDAY MAKOTO TACHIBANA 2013.11.17
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真琴!お誕生日おめでとう!!
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