残念ながら、遙と真琴とはクラスが違う。
幼馴染みだからといって一緒という訳でもない。だからか、二人は先に帰ってしまっていた。学校の帰りに遙の家の居間へとお邪魔をすれば、いつの間にかぴょこんっと知らない間に人が増えていた。
赤いネクタイの制服の男の子。つまり一年生だ。その子にウサギのようだと口にすればペンギンがいいと言われてしまう。

「あれ、ペンギンってイワトビペンギン?」
「そう!それ!って、ハルちゃんやマコちゃんと一緒に居るってことはイツキちゃん!?」
「あーーー!スイミングクラブの、渚!?」

スイミングクラブに通っていた頃、ペンギンが好きで一つ下の男の子がよく遙たちの後をついていたのを思い出す。
それが、目の前にいる葉月渚だ。
遙は夕飯の準備をするために台所に立っているのでしょうがないが、真琴は側で腹を抱えて笑っている。どちらかが教えてくれても良かったのにと、だらけるように横たわれば帰るのが面倒になってしまう。

「ねぇ、ハル?今日泊まっていい」
「勝手にすれば」

台所に立つ、遙に向かって声を掛ければ構わないと返答が返ってくる。その声に驚くのが渚だった。


「えぇぇぇえええええ!? ハルちゃんと イツキちゃんって、そーいう関係だったの!」

「渚、落ち着いて!!」


渚がいきなり耳元で叫ぶもんだから、キーンっと響く。痛む耳を押さえ、握りこぶしを作ろうとすれば真琴が押さえて押さえてっと言ってくる。


「だって、マコちゃん!泊まるって、泊まってくって」

「あのね、渚。二人とも親同士が仲が良いんだけど、樹ちゃんのとこも今、単身赴任中のお父さんのとこにお母さんが行っちゃっていないんだよ。

 それに泊まるって言っても 樹ちゃんが使う部屋は客間。おじさん、おばさんも知っていることだしね」


動揺する渚に、丁寧に説明する真琴は付け足すように 樹ちゃんは料理が出来ないし、ここまで来る際の階段の上り下りが嫌いなんだよっと、余計なことまで告げた。


「真琴、私はハルのように喋るのが面倒でも無いからそこまで丁寧に代弁してくれなくてもいいんだよっ!」


引き攣る笑顔で 真琴に言えば、隣にいた渚は空笑いをしながら一歩退いた。

「ごめん!樹ちゃん!!」
「どうせ、私はハルのように料理は出来ないよ――っ、」

立ちあがり叫ぼうとした瞬間、後ろからコツンっと殴られる。

「別にいいだろ、俺が 樹の分を作れば済む話だし」

振り返れば、皿を持った遙が出来たからテーブルの上を片付けろと言ってきた。今日も、遙の作った晩ご飯のメニューには鯖が入っている。


“そんな日常”




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