部活帰り、明日の大会に向けて、皆で神社へお参りに来ていた。
真琴、樹、遙、渚、怜が横一列になって祈願する。手の中にある十円玉を、樹は強く握り思いを乗せた。
手から放したお賽銭が、カランコロンと音を立ててお賽銭箱へと入っていく。鈴を力強く鳴らし、神様を呼び、この場所へ来たことを知らせる。二拍手一礼、願いを込めた。


(みんなが、無事に何事もなく今までの成果が結果として残せますように―――)


空は薄紫色も混じって、すっかりと茜色。石段に座る真琴の隣へとしゃがみ込めば、顔を向けられる。

「樹ちゃん、長かったけど…何のお願いしたの?」
「もちろん、みんなのことだよ」
「ありがとう」

ふんわりと笑みを零し、見つめられる。真琴の顔が夕焼けに照らされて、うまく見ることが出来なかった。それとも恥ずかしさからか。

「マネージャーですから、当たり前ですよ」

顔を正面へと向けて告げれば、真琴の隣に怜が座り、怜と真琴よりも上の石段に事を終えた渚が座った。

「マコちゃん、イツキちゃん。リンちゃんがバッタにもリレーにも出ないのって…やっぱり、ハルちゃんが出ないからなのかな」

「どうして、遙先輩が出ないと出ないんですか?」

「そういう関係なの」

「何なんですか、それ!?」

渚は先に石段に座っていた二人へ問うように口にするが、その答えは何となくだが渚も分かっていた。出ない理由が明確でないことに、怜は渚へと声を上げたが、それを止めるように真琴が告げる。

「まぁ、まぁ。今回は俺たちも個人種目だけに絞って、それぞれの力を出し切ろう」

「そうだよ。怜くんにとっては、初めての水泳大会なんだし頑張らないと」

「…出来れば、僕もリレーに出てみたかった」


怜から“リレー”と出た言葉に真琴、樹、渚は顔を見合わせた。


「レイちゃんも、リレー出たいの!?」

「はい。こないだレンタルで、オリンピックの試合を見たんです」


異なる種目の四人が、力を合わせてひとつのコースを繋いで泳ぐ姿の美しさ。そしてタッチ瞬間の、バッタの美しさに魅了されたと。
バッタは折返しおよびゴールタッチは、両手同時に行わなければならない。その動作を自分なら、いかに美しくするかを考えていると、口は止まらなかった。


「――はぁ?遙先輩、なんですか これ!」


江の驚く声が響き、何事かと一斉に顔を向けた。

「ハルと江ちゃん、何かあったのかな?」
「行ってみようっか」

何かあったのかもしれないと、石段から立ちあがり遙と江の元へと駆け寄った。


「…半吉って?」

「なに、なに?どうしたの?」


遙のみくじ箋の内容に、江は驚き声を上げたようだ。

「半吉?そんなの初めて見た」

「ここのおみくじって確か、区切りが細かいって聞いたことがあるけど…見るのは、私も初めてだよ」

小さい頃から、ここのおみくじは引いていた真琴も樹も、それは初めて見るものだった。ただ樹は、聞いたことがあった。ここのおみくじは吉凶が多いと。
小吉よりは良くなく、末吉よりは良い。半々の運勢で、文字のまんまだ。

「半分吉って、ことですか?」

「後の半分は?」

「優しさ!」

怜の半分吉と言ったことに、江は質問した。聞いたことのあるキャッチフレーズを渚は口にし、それ何か違いません?と怜から突っ込まれてしまう。


――吉凶、つまり占いの結果よりも運勢の説明で何が語られているかが大切だ。ここの吉凶は細かいのに、書かれている運勢は少ない。


手の中にあるみくじを樹が覗く。“待人:待ち人来たる”の文字がそこにはあった。きっと、それは凛のことなんだろう。


「ハル…?」

「別に、気にするな」


問題ないというように、遙はみくじ箋から目を放し空を仰いだ。大会は明日―――…‥


“何かを知らせる報せ”


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