海風を感じながら、朝の光を浴びる。いつもながらの風景。石段を前にして先ほどの気持ちとは一変、樹は毎回のことながら気だるさを感じていた。重力が嫌う樹は、階段の上り下りが億劫であったのだ。

「……しかし、すべては朝ごはんのために」

今日は昨日と違って、メールでの連絡は無い。目的地となる遙の家に着けば、インターホンを鳴らすが応答がない。
仕方ないと思いつつ、裏側へと回る。勝手口からの戸に手を置いて、樹はお邪魔しますと言って足を踏み入れた。

「ハル、真琴!おはよう」
「……はよ、樹」
「あ、おはよう。樹ちゃん」

香ばしい匂いに釣られて、台所に顔を覗かせばここの長男であり、ただいま独り暮らしを満喫している七瀬遙と、幼馴染みの真琴がいる。そのまま居間へと促されて、テーブルを挟んで三人で座った。


「って、また鯖なの……?」
「嫌なら、食わなくてもいいぞ」
「いえいえ、有難くいただきます!」


出された鯖の乗った皿を引っ込めされそうになって、急いでいただきますっと口にする。テーブルの鯖と一緒に並ぶのはトーストだ。ご飯ではなくトーストであることは、いつものことなので言わないでおこう。


「そういえば、真琴はいつもながらご苦労さまだね。ハルのお迎え」
「そうでもないよ。それに、ハル 迎えにいかないと学校に来ないかも知れないからね」
「ん――、その面倒見の良さ!真琴がハル並みに、料理が美味ければ、すぐにでも嫁に欲しいぐらい!」

なぜか、樹の言葉に二人とも固まってしまう。

「いやいや!それは、ハルに殺されるからか遠慮しておくよ」
「あ!っおい!真琴っっ!!?」
「無い無い!のんびり屋のハルは、いくらなんでも殺したりはしないって」

無口でマイペース、私に言わせればのんびり屋と同じだ。ただ、泳ぐこと 水に関しては別だが。それ以外で感情を出したりするんだろうか。


「あはははは、」

「………(ったく、察しろよ。鈍感っ)」


“いつもの朝”



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