「イツキちゃーん!!おはよう!!
ねえねえ、イツキちゃんは今日が何の日か知ってる?」
「おはよう、渚!ごめん、ちょっと急いでいるからまたね!!」
校門を通ろうとする樹を見掛けて、渚は駆け寄ったが 樹は驚きながらもすぐ去ってしまう。
「レイちゃん、おはよう!聞いてほしいんだけどね」
「すいません!渚くん今はちょっと!」
教室へと向かおうとすれば、怜は手で渚を制して樹と同じようにすぐ離れてしまった。
「ハルちゃん、マコちゃん?」
「ごめん、渚!これから、俺ら移動教室だから」
「……え、あうん」
休み時間に遙と真琴に会いに行けば、話すことも出来ず。
「あ、ゴウちゃん!!」
「無理、今忙しいのーーー!!」
その日は一日、皆の様子がおかしかった。誰も相手にしてくれない。
タイミングの悪さだと思い、樹や遙たちに何度か会いにいくが、何かと用があるといわれて話しかけようとすれば言う前に、皆がどこかに行ってしまう。
渚はひどく、寂しさを感じていた。今日は渚にとって大切な日でもあったからだ。
「皆、ひどいや」
気付いた時には 怜も江もいなく、渚は頬を膨らませて自分の鞄を背負って昇降口へと向かった。
昇降口へと向かえば、遙、真琴、樹の楽しそうに笑う姿を見つけるが、声を掛けられずにいた。
「………どうしよう」
プールに向かいたくないと思ってしまうなんて、ないと思っていたのに それを感じてしまう。一度、足を向けたが体を反転させた。
「…渚くん?」
「あれ、レイちゃん…先に行ったんじゃ?」
校門からこちらに向かって来たようで渚と怜は鉢合わせてしまった。怜は慌てるように、手に持っていた袋を後ろへと隠すが渚に不振がられる。
「レイちゃん、何隠したの?ねえねえ、みーせって!!」
「うわ、あ!ダメです、渚くん!?」
渚に腰に抱き付かれて、後ろに隠したビニール袋を取られてしまう。怜は、目頭を押さえて盛大な溜め息を漏らした。
「え?これってイチゴミルクアイス…?」
「樹先輩に頼まれたんですよ。購買に売ってないからって…」
袋の中身を見た渚は、きょとんとした顔で怜にどうしてと尋ねた。その中にあったものは、渚の好きなイチゴミルクアイスだったからだ。
「あ、怜くん!渚の好きなアイスあった?」
「イツキちゃん…?」
「げ、渚――――」
プールに向かったはずの樹が校舎側にいた怜へ声を掛けたが、渚がいたことに自分の額に手を当てた―――…‥
「みんなして、ひどーーーいよ!!!!」
更衣室に響き渡るのは、渚の怒った声だ。
「まぁまぁ、渚。これもお前のことを思ってやったことなんだからな」
「そうですよ!渚くんにバレないように前日に打ち合わせとか結構、大変だったんですから」
「ま、結局はバレたけどな」
怒る渚を真琴と怜が宥めるが、遙が辛口の言葉を漏らす。
「そう落ち込まないでくださいよ、樹先輩」
「江、ありがとう。でも、もっとサプライズ的に驚いてもらいたかったんだよ」
全ての事の発端は、樹だった。
今日一日、極力 渚との会話は控え接触もしないようにすること。その理由は更衣室の飾り付けを見て分かることだ。
“お誕生日おめでとう、渚!!”の垂れ幕と共に飾り付けをされた更衣室。
渚を驚かせたいという、そのためだ。
「樹ちゃん、大丈夫だと思うよ。渚のやつ、今になって驚いている」
「え?」
「さっきまでは、怒ることでいっぱいいっぱいだったらしく気付いていなかったみたい」
真琴の言葉に、渚へと目を向ければ 確かに口を開けて目を潤ませていた。
「コホンッ!!では改めまして、渚…
『おたんじょうび、おめでとう!!!!!』
ごめん、嫌な思いをさせたね」
ボソッと渚にだけ、最後の言葉を伝えれば、渚は首を左右に何回も振った。
「ううん!いい思い出になったよー!ありがとう!イツキちゃんー!」
“いい思い出に”
HAPPY BIRTHDAY NAGISA HAZUKI 2013.08.01
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学校がお休みとかは聞いちゃいけませんよっ!渚、誕生日おめでとう!
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