寒くない?と告げた渚の言葉によって、遙や樹たち全員は雨を避けれる場所は無いかと探し、高台に建つ灯台へと向かうことにした。
そこは、すでに廃墟と化した古びた灯台で、灯光の役割のみ行なっているようだ。いかにも、何かが出てきそうな雰囲気を漂わせて。

「樹ちゃん、いける?」

「む、無理だと思う。……真琴は、真琴は怖くないの?」

「皆と一緒だから平気だよ」


同じ怖がりである真琴の言葉に、樹も唾を飲みこみ覚悟を決める。皆がいるから大丈夫と頭の中で繰り返し、中に入ろうと。
建物内は暗く、足音が妙な緊張感を与える。懐中電灯を見つけた渚の、大袈裟なリアクションに遙以外の三人は肩を大きく揺らしてしまう。


「樹、怖いのが落ちつくまで握ってろ」


耳元で小声で呟かれる。それは懐中電灯を持っていない手を差し出した、遙からの言葉だった。
樹は何も言わずコクンと頷き、その手を握った。昔からこういうのには、遙が一番冷静で樹は真琴と一緒に遙の後ろにくっ付いていたのだ。

中央のホールらしき場所には、何もなく。角を曲がれば、広いキッチンという厨房に辿り着く。

「もとは食堂だったみたいだな」
「お、じゃあ食べ物とかあるかな?お腹空いたぁ〜…」

お腹が空いたと告げた渚は食料を探そうという。
照らされる灯りで確認し、古びた棚は自分と樹、シンクの下は遙と真琴、錆のようなこびり付きある大型冷蔵庫を怜が担当して食料を見つけようと。

「ちょっと!なぜ、一番ヘビーな任務を僕が!?」
「レイちゃんの“レイ”は冷蔵庫のレイ…パァーン!!」

親指と人差し指を立てて渚はいうが、怜はこじ付けだと言って声を上げた。

「で、出来ませんよ。開けたらなんか、すごいドロドロしたものが出てきそうで…」
「やめろ、樹が怖がる」

樹の肩が飛び跳ね、握っている腕にしがみ付けば、遙が言うなと告げる。
結局、樹抜きでジャンケンをして冷蔵庫を開ける者を決めるが、負けて怜が担当になったが中は何も入ってはいなかった。


「…もう平気か?」

「うん、ハル ありがとう」


レストハウスの2階に上がり、残っていたテーブルの上になんとか見つけた鯖の缶詰、パイナップルの缶詰、2Lのミネラルウォーターを置いた。

「あ、そうだ!はいっ、イツキちゃんタオル。一枚だけだったからイツキちゃんが使って!」

渚は着るものようとして、怜と渚にエプロンを渡すが断れてしまう。それとは別に、袋に入ったフェイスタオルを渡した。

「え、でも……」
「樹ちゃん、肩に羽織っておくだけでも違うと思うから」

真琴に分かったと告げれば、真ん中に座っていたひたすら缶を開けてい遙が、鯖とパイナップルの組み合わせで鯖ップルを完成させていた。
お水も沸かして身体の芯を温める。鯖に乗せてても結局は別々に口に入れた。パイナップルの缶詰の甘さにより、鯖も甘じょっぱい味だった。

「まだ降ってるな」

窓の外に目をやった 遙から声が漏れれば、怜がそれに答えた。

「朝まで、ここで過ごすしかなさそうですね…」
「今から何しようか…」

何やら楽しそうに告げる渚に、遙は一言「寝る」と口にすれば不満を漏らす。頬を膨らませてそれじゃあ、つまらないと。

「えー!せっかく無人島でサバイバルなんだよ!?魚を銛で突いたり、食べられるキノコ探したりしないのぉ!?」
「何かの番組じゃないんですから!」
「渚、怜くんの言う通りだよ!それに、この天気で探しに行くのは無理でしょ!」
「…そうだよなぁー、この天気でって樹ちゃん?天気が悪くなければやりたかったりしたの…」
「えぇっと、冗談だよ。冗談」


意外にも樹もやりたかったのか、もしくはこの場を和ませようにしたのか、きっと後者だろうと思いながら 真琴は改めてどうするかという。
こんな状況でとても眠れそうにないと告げれば、何かを思い付いた渚がアレをやろうと口にした。



「さぁ〜て、次は!誰がっでるかなぁ、誰がっでるかなぁ〜?」


渚はお手製の名前が書かれている、6面サイコロを振って読み上げる。出た目の名前の人が、渚からお題ともいえるテーマを言い渡され、それに副った思い出話を語る。
すでに怜は恥ずかしいお話を終えた後なので、自分が当たらないように祈っていた。サイコロの2面が自分の名前だったので、余計に。

「あ、ハルちゃんだね!次のお題は恋のお話。略して恋バナ」

渚のお題に、怜と真琴の声を揃えて恋バナと告げる。樹も、遙の恋の話は聞いたことがなかったので少し興味があった。

「遙先輩って、恋バナあるんですか?」
「えっと、その、俺もそこはわからない……」

耳打ちされた怜の言葉に、一度だけ樹へと真琴は視線を向け、怜に首を横に振った。
何を話すのかと下から立ち上がった遙を樹が見上げれば、目が合ってしまい一瞬だけ鼓動が揺れた。



“サイコロの目”




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