「なにやってんだ?」
「どうしたの?渚、ジャージ姿で」
「ハルちゃん、イツキちゃん、…マコちゃんもおはよ」

遙と樹、真琴が一緒に登校をすれば校門前で、ジャージ姿で息を上げている渚がいることに気付く。
渚の息が整うのを待っていれば、聞こえてくる足音に渚が「レイちゃん」と口にする。振り向けば、渚同様にジャージ姿の怜が遙へと近付いてきた。

「貴方が、ハルちゃんさんですね」
「ちゃん付けのうえに、さん付けは止めろ」
「どうかしたの?」

先程まで、一緒に走っていた怜が遙に声を掛けてきたので渚は何事かと口にする。

「仮入部でよければ、その合同練習に行ってもいいです」
「えっ!?本当?」
「ただし、条件があります。僕は泳ぎません!」

一駅分走りの頑張りと渚の粘りに、怜が仮入部の件と合同練習の参加をしてもいいと告げた。
理論と計算で跳んでいる棒高跳びを凄く綺麗と言ってくれた渚が、遙の泳ぎは綺麗であると告げていた。怜は自分の目で確かめたくなったんだろう。

「やったじゃん!!渚!!」
「うん、でしょ、でしょ!イツキちゃん、もっと褒めていいよー!」
「僕はあくまでも仮入部ですから、それを忘れずに」

何をしたかは分からないが、人一倍 部員集めに精を出していたのは渚だったので、私は仮入部であっても素直に喜んでいた。


「やっぱり、屋内いいなぁー」


鮫柄学園の屋内プール、水泳の強豪校といわれるだけあって設備が充実しているのが分かる。
渚は目を輝かせてプールを見ていたが、江も同じように目を輝かせていた。ただし、見ているのは身体の造り、筋肉だ。


「やあ!よく来てくれたね」

「よろしくお願いします」


水泳部キャプテンの御子柴が、挨拶をしに顔を出す。その声に、私たちが声を揃えて返した。

「ああ。君、七瀬くんだろ小学校時代、県の大会で何度か優勝しているよね。噂はよく聞いているよ、覚えていないかな」

目の前にいる遙へと小学校時代の思い出話を喋り出すが、当の本人は興味になさげに顔を横へと向けていた。


「あ、先輩!どうしたんですか?」
「別に…、」


顔を出した凛に後輩の似鳥が声を掛け、その姿に気付いた江は兄、凛の元へ思わず走り出していた。そのあとを渚が追うように渚も凛の側へと近寄った。

「江、お前なに余計なことやってんだ」
「リンちゃん!また一緒に泳げるね、今日はよろしくね!」
「一緒に?フンっ、お前たちじゃ相手になンねえよ…‥‥。樹、お前に話あんだけど」

御子柴の昔話から、遠ざかりたかった私は遙と真琴たちから二、三歩離れた場所に居れば、凛からいきなり声が掛かる。


「え…、何?」

「え、じゃねーよ。ともかくこっちに来いって」


凛に腕を引っ張られそうになれば、反対側の腕を誰かに勢いよく後ろへと引かれ、私の体はトンっと何かに当たる。


「行かなくていいから」


上から降ってくる声に、腕を引っ張ったのは真琴であることに気付く。そして、私と凛の間に入り込むように遙が立ち塞がった。


「ッチ……」
「樹ちゃんは、マネージャーの仕事があるんだからね」
「それは、わかってるけど。真琴もハルも、どうしたの?」


凛は遙と真琴の顔を見て、そのまま背を向けて外へと出ていってしまう。樹に至っては、何が何だか状況が飲み込めなかった。



“合同練習のはじまり”




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