「本日は、皆さんに良いお知らせがあります!ね、樹先輩!」
「そうそう、江が鮫柄との合同練習を取りつけてきたんだよ」
「え!樹先輩も一緒に行ったじゃないですか!?」
「まぁー、そうだけどね」

プールサイドに遙たちを呼び出して、江は胸を張る様に告げれば、真琴と渚が驚くように声をあげた。

兄妹という伝手を使い、江はいつの間にか鮫柄学園の水泳部部長と顔見知りになっていた。そんな江が、鮫柄水泳部と合同練習が出来ないかと口にしたのだ。
一応、男子校なので、私は心配で同行をした。そして、私は江を守った。御子柴清十郎、可愛い江の手を取るなんて、なんて抜け目のない男だと払い退けてやった。

「ってことは、あの鮫柄の屋内プールで今度は堂々と泳げるのかー」
「ただし、合同練習というからには最低四人必要だって、言われちゃいました」
「それじゃ、当日までになんとしても あと一人入部してもらわないと。折角、イツキちゃんと ゴウちゃんが色仕掛けで取り付けてくれたんだもん」
「色仕掛け担当は江だから、私は何にもしてないよー」
「なっ!色仕掛けじゃないですって!樹先輩も何を言い出すんですか!」

その光景を笑いながら真琴は見ていたが、隣に座る遙はどこか怒っているような表情で横を向いていた。


「ハル……?」


 * * *



水泳強豪校となる、鮫柄学園水泳部。体力作りの一環としてランニングは欠かせない。その中に、ジャージ姿で走る凛がいた。
ルームメイトでもある、ひとつ下の似鳥愛一郎に声を掛けられ動かしていた足を止める。

「合同練習?……聞いてねえぞ」
「部長が決めたらしいです。先輩の妹さん、岩鳶の水泳部にいるんですよね。部員は七瀬遙、橘真琴、葉月渚。共通点は女の子みたいな、なまっ――!?」

その話は、あまり触れられて欲しくないもので、凛は似鳥に睨みを利かせる。その表情を読みとって似鳥は、すみませんと告げた。


「なんで、知ってんだ」
「僕もあの大会、出てましたから!松岡先輩は小学校最後の大会ですよね。僕は予選で落ちちゃいましたけど、あの時のレースは本当に素晴らしかったです!」


目を輝かせる似鳥から凛は顔を逸らした。似鳥は、言い忘れていたことがあるように「あ!」と口にする。


「あと、大会で見た 朝日奈樹さん。彼女も水泳部みたいですがマネージャーのようですね。部長がそんなことを言ってました!」
「は?あいつがマネージャー?」



そんなことを、鮫柄水泳部で話されていたとは遙も樹も知らない。
話題、つまり噂とは遅れてやってくるのだろうか。


「くっしゅん…、やっぱり誰かが噂している」


樹は、遙の家で晩ご飯をごちそうになった。食べたあと、何か面白いものはないかと遙の部屋に入って、机にある模型を眺めいた。
遙はっというと縁側に行くと告げて、部屋を出て行ったきりで戻ってこない。
なかなか戻ってこない遙の様子を見に、居間の引き戸を開ければ、遙は庭に出て野良猫に餌を上げていたようだ。縁側のガラス戸を引けば、その音で遙が気付きこちらを見上げた。

「ハルー、外に居過ぎると冷えるよ」

「あぁ、今戻る。

 …‥樹!っ」

開けたガラス戸から顔を出し、部屋に戻った方がいいと告げてその場を離れようとすれば遙に腕を掴まれてしまう。


「勝手に、男子校なんか行くなっ」
「え?ハル!?」
「それだけだ。……部屋に戻るぞ、樹。風邪ひく」


ポンっと頭の上に乗っかったその手の大きさに、樹の鼓動は大きく跳ねた。それは、遙からの意外な行動のせいなのかは分からない。


“真意は不明”




[top]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -