「イツキちゃんーーー!!!!」

部活自体は、まだ本格的の活動ができないので帰り支度をしていれば、渚が教室を覗くように手を振ってきた。いきなりの下級生登場で、クラスの人たちから視線を浴びてしまう。
注目の的から逃れるように、廊下へ急いで出れば遙と真琴、それに江までもがそこに居た。
渚はついて来て欲しいと告げ、しぶしぶ靴へ履き換えた遙の腕を掴み、こっちこっちとグランドへと引っ張っていく。

「なんだよ」
「もうね、間違いなく一押しなんだよ」

水泳部の新入部員として、一押しの生徒がいるというのだ。渚と遙の後ろをついて行けば、グランドでは陸上部の活動が行なわれていた。
トラックの中央では、棒高跳びのマットが設置されており、周りにはポール、いわゆる棒を持っている部員の人たちがいる。

「陸上部」
「渚、陸上部の人を誘うつもり?」
「だったら、ダメだろう」

樹と真琴の言葉に、渚は答えず中央の部員の中にいる、藍色の髪に競技用のバイザーをする男子を指差す。

「ほら、あそこ!これって運命だと思うんだ」

その顔に、私はどこかで見た気がして記憶を辿れば打つかった男子だと思い出す。

「あ!廊下のときの!」
「樹、知ってんのか?」

遙の声に首を振って「一度、渚が勧誘していたのを見ただけで…でも、断られていなかった?」と告げた。渚はそれでも運命なんだと言い、余程のことなんだと思い、遙と江が口にする。

「中学で水泳部だったのか?」
「すごい記録を持っているとか?」
「名前だよ!名前!」
「名前?」
「まさか、渚……女の子みたいな名前とか言うんじゃ」

名前と告げたことに真琴は疑問に思うが、樹は気付いてしまう。この水泳部、男子の共通点のことを。両手の握りこぶしに力を込めて、うんっと頷き渚は目をくりくりさせた。

「そう!竜ヶ崎怜ちゃんっていうの。僕たちと同じなんだ!男なのに女みたいな名前」
「そこっ!?……でも、確かにすごい三角筋」

頬赤らめてうっとりする江に、今度は同じように真琴が声をあげた。二人はいい加減な理由ではないと言い、渚はこれはフィーリングなんだと告げた。

「おい、跳ぶみたいだぞ」
「ほらほら、見てみようよ」

私たちは見物する。一呼吸置いて、ポールを掲げ走り出す竜ヶ崎怜を。ボックスといわれている凹みのある部分にポールを突いて踏み切り、大きくしなるポールを支えにし一気にバーを跳び越える。
その一連の流れはとても、決まっていた。素人の目から見ても、飛び越えたときのフォームが綺麗だと感じさせられる。まるで、空を飛んでいるようで私には羨ましかった。

「すっごい綺麗なフォームだ。あれなら、飛び込みも上手そうだね」
「はい!上腕二頭筋も綺麗!!」
「だから、そこ!?」

遙は、何も言わない樹を気にして顔を向ければ、小さく、本当に小さな声で呟いているのを聞いてしまった。


「…ホント、羨ましいな 空を見れるって」
「…‥(樹っ?)」



“憧れる、空を”



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