「いいんや、ヨシヨシも高校生だもんなあ。大人の階段上りたい気持ちはよーく分かる、分かるぞヨシヨシ。俺もそうだった、その気持ちはとてもよく分かる。そんな思考に至るになったヨシヨシの成長っぷりはむしろ嬉しいもんだ、がしかし!俺が言うのもなんだが、好奇心は猫をも殺すというであろう!?まさにそれ!若気の至りというやつで将来後悔することがあるのもまた事実だ!だがそれを恐れていては大人にはなれないというこのジレンマ!そんな悩める少年こと三好吉宗に俺が友人として忠告するならばそれはただ一つ!とりあえずお前はイメージ的に似合わんので今流行りのギャップ萌えってやつでポイント稼ぐのは不可だからやめとけ!」

昼休み、屋上で唐突に正臣君に訳の分からない話をされた。指をびしっ、と指されて、早口に捲くし立てられた内容は、正直言ってよく分からない。大人の階段、とか若気の至り、とかギャップ萌え、とか断片的な単語は聞こえてきたけれど、それだけでは何を言われたのか全く分からなかった。
素直に首を傾げると、正臣君はまたべらべらと喋り続ける。隣でパンを齧っている帝人君が「聞き流したほうがいいよ」と耳打ちしてくれて、園原さんも困惑しながらも聞き流す選択をしたらしい。僕も二人に習って、とりあえず弁当箱に意識を集中させることにした。

「お前らなー、この俺のありがたーい言葉をスルーとはどういうことだよ」
「正臣の話がにありがたみを感じたことなんて一回もないよ」

目の前で繰り広げられるいつも通りのやり取り。それを苦笑しながら眺めて、ふと空を見上げる。
今日も、いい天気だなあ。あ、そういえば明日英語の小テスト、あるんだっけ。勉強しときゃなきゃ。

「ヨシヨシ、」

どかりと正臣君が隣に腰掛けた。先程まで帝人君といつもの漫才のようなやり取りを交わしていたはずなのに、いつの間にやら帝人君は園原さんと話している。
それを横目に、まるで二人には内緒の話をするように、だからな、と正臣君は声を潜めて、僕の耳元に口を寄せた。

「煙草、吸うのはいいけどばれないようにだけしろよ?」
「え?」
「匂いって、意外と付きやすいんだぜ」

気いつけろよ、と正臣君は僕のパーカーを叩いた。

(なんで、煙草、)

考えて、はっとした。
僕はもちろん、煙草は吸っていない。なら、匂いの付く原因は、一つ。一つしか、思い当たらない。

いつも煙草を吸っている、バーテン服が思い出された。

「……」

正臣君たちはまた別の話題で盛り上がっているようだった。それが不幸中の幸いだ。真っ赤に茹で上がった顔が、どうか気づかれませんように。










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