今日は本当に楽しい一日だったと、家路を歩きながら吉宗は息を吐く。白くなるそれはふわふわ宙を漂い、すぐ消えた。ちらちらと降る雪は、東京でも積もるのだろうか。

色々なところに連れて行ってもらって、色々な人とはしゃいで、プレゼントまでもらって。本当に、楽しい一日だった。今は鞄の中にいる、谷田部からもらった小ぶりのぬいぐるみはどこに飾ろうか、そんなことを考える。

(、これで)

これであの人に会えたら、最高だったのに。

年末だからか、仕事が忙しいらしく、せっかくのクリスマスなのにごめんな、と謝られ、吉宗の大好きなあの掌で頭を撫でられたのは、記憶に新しい。元旦は一緒に初詣に行こうなと、そう約束してくれたあの優しい人は、働きすぎで疲れていないだろうか。寒いから風邪も引いてなければ良いが。

(メール、してみようかな)

けれどあの人はメールが得意ではない。送れば返してはくれるが、彼にとってはメールの返信も一苦労だろう。余計な労力をかけさせたくはない。でも電話となると、一体いつかければいいのか分からないから、うーんと吉宗は頭を捻る。
凍った路面に足をとられないように、真っ暗な道を歩きながら、やっぱり元旦まで我慢しようと、角を曲がった。

「あ、」

もうすぐそこに見える三好の家の前。レンガの壁に背を預けてたたずむ金色が見えて、吉宗はどきりとする。マフラーしか巻いていないその格好に慌てて走りよれば、案の定つるりと滑ってしまった。

「うわ、」
「ん?うおっ、」

ぼふり、気づいた静雄に受け止められ転倒は免れた。そろりと体を離してありがとうございます、と頭を下げれば、気をつけろよな、と苦笑されて、頭を撫でられた。

「あの、静雄さん。今日はお仕事、だったんじゃ」
「ああそうだよ。けど予定詰めてさ、何とか終わらせてきた」

お前に会いたくなって、見上げた静雄は、吉宗の頭を撫でながら、笑っている。サングラスの奥の瞳が優しく細められて、顔が熱くなるのを感じた。静雄は時々、こういう風に恥ずかしいことを、さらりとやったり言ったりするから、とても心臓に悪い男だと吉宗は常々思っている。

「ほら、これ。ケーキ買ってきたから、家族で食えよ」

渡された箱を受け取りながら、吉宗はちらりと赤い顔で静雄を見上げる。

「あ、の、静雄さん」

静雄のマフラーの裾を握りながら、今日、父も母も帰ってこないんです、と小さく呟いた。

「もし、夜もお時間あるなら……えっと、」

と、泊まっていきませんか。

吉宗の言葉は静雄には予想外だったようで、さすがの静雄もぽかんとしている。恥ずかしくて居た堪れない吉宗は言ってすぐにうつむいたが、静雄にマフラーを掴んでいた手を握られて、びくりと顔を上げた。

「いや、その……迷惑で、ないなら」
「、はい、ぜひっ!」

照れくさそうに頭をかく静雄に、吉宗は満面の笑みを浮かべる。ケーキも嬉しいが、この人と一緒にいられることが、何よりのプレゼントだと、心からそう思った。







Merry Christmas
2011.1225











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