「あ、起きた?」
もぞもぞとベッドの中で身じろいでいると頭上から声が降ってきて覚醒する。体のあちこちが鈍く痛んで喉も焼けるように痛い。昨晩の行為が体に響いているのは明確だった。
「ごめんね……無理させちゃって」
はい水、渡されたペットボトルに口付ける。寝転がりながら器用に中身を飲むと、ベッドにぎしりと体重がかかった気配がした。臨也君が腰をかけたようだ。
「ね、帝人さん。手出して」
言われるがまま右腕を突き出すと違うよ、と左腕を布団の中から引っ張り出される。未だにぼんやりとした頭で眺めていると、臨也君は何かをポケットから取り出した。
取り出して、そして、それは迷うことなく薬指にはめられる。
「こ、れ……」
「いつか付けてもらえたらいいなあと思って、大分前に作ったんだ……無駄にならずに済んでほんとよかったよ」
笑う臨也君は、そうして薬指に口付た。恭しく、まるで壊れ物を扱うみたいに僕の手を掬って、銀色に輝く真新しい指輪に口付ける。
「帝人さん、俺と結婚して下さい」
天国の君は、怒るだろうか。悲しむだろうか、それとも恨むだろうか。けれど、ごめんなさい。
君の事が大切で、僕にとっての特別である事は今も昔も、そしてこれからも変わらない。君は確かに僕の特別で、大事な人です。これからも、ずっと。この先一生、それは変わりません。
でも、だから、どうか。彼を愛する事を、許して下さい。許してくれなくてもいい、ただ見ていて欲しい。
君の分まで、僕は生きてみせる。
愛する彼と、生きていきます。
だから、ありがとう。
そして、さようなら。
「返事、聞かせて」
そんなもの、一つに決まってる。
「……はい」
伸ばした左腕に、彼はもう一度、口付けた。