ぎゅっと握り込んだ学ランからは折原先輩の匂いがした。それに気を取られている間にまた後ろから激しく奥を穿たれて、僕の頭は真っ白になる。

「あっ、ぁあぁっ」

屋上に続く扉の手前。階下からは死角になっているそこはもちろん学校内で、放課後と言えどいつ人が来るか分からない状況なのに変わりは無い。なのに僕はというと、下半身の衣服を剥ぎ取られて、ブレザーもその辺に放られて四つん這いにさせられている。一応折原先輩の学ランが体の下に敷いてあるから、顔や腕は痛くない。けれど、下腹部にはそれすらも気にならないくらいの圧迫感。

「ゃっ、あ、くっ、あぁっ」
「……帝人君、」

背後から耳元に直接声を吹きこまれる。腰を抱えて、好き勝手に腰を打ちつけて来るのは僕をこんな場所に押し倒した張本人。
後穴に異物を入れられた圧迫感と違和感は半端なものではなくて、けれど僕の気持とは裏腹に指と口でどろどろに解されたそこはあっさりと先輩の侵入を許してしまう。後はもうひたすら突かれるだけ。何時間が経過したのか、それすらも分からないくらいの、果ての無い行為。

「いっ、ゃ、あっ、んんんっ」

申し訳ないとは思いつつも敷いてある学ランに歯を立てた。そうでもしないと声を抑えられないからだ。唾液で汚してしまうだろうとは思ったけど、ここは学校だ。人にこんな声を聞かれてしまった日には、もう僕は学校に来れない。
それなのに。

「なに、帝人君、それってば俺に対する反抗?いいよ、好きにしなよ。俺も好きにするから」
「あ、や、まって……!」

折原先輩はそれまで放置していた前に手を伸ばしてきた。後ろの刺激だけで何度か達していたそれは熱を持っていて、久しぶりの直接的な刺激にびくんと体が勝手に震える。

「あっ、あぁっ、やだっ、やめっ、」
「やーだ。止めない」
「ひっ、せんぱ、……あんっ!」

後ろから深く腰を打ちつけられる。ぐりぐりと奥を抉るゆっくりとした動きとは対照的に、自身を扱く手の動きは早く荒々しい。ぐじゅぐじゅと音を立てながら尿道に爪を立てられる。その容赦のない手つきは痛みすら感じて、僕は悲鳴を上げた。

「あぁっ!ひ、やぁ、あぁっ、」
「はは、可愛いなあ帝人君」
「やだっ、やめ、……」

声を抑える余裕も無い。ゆっくりと奥を抉るだけだった動きが、急に変わる。入口付近までずるりと抜かれたと思ったら、深く強く中まで押し込まれる。中の性感帯を容赦なく押し潰し、前も精巣をぐにぐにと揉まれた。あまりの強い刺激に僕の背中は反り返る。それすらも抑え込むようにして、先輩は体を密着させてきた。

「ふっ、あ、う、やぁ……」
「ほらもっと頑張って」
「ゃぁ……」

止まらない涙が学ランに染みていく。ぽたぽたと掴まれたままの自身からも白濁が漏れているのが自分で分かって、羞恥と快感でもう何も考えられなかった。
相変わらず強く扱かれる前と、性感帯を抉ってくる後ろ。前後からの刺激に足が震える。学ランを握って額を床に押し付けても全然紛らわせない。頭を振る、唇を噛む、けれどやっぱり、快感はごまかせなかった。

「は、ふっ、あ、はっ、」

呼吸が出来なくて苦しかった。折原先輩のキスはすごく激しくて、なれない僕はいつも呼吸困難に陥るけれど、口を合わせていないセックスという行為でも呼吸が苦しくなるというのは初めて知った。
強烈な快楽は僕の体で受け止めるには大きすぎる。息が出来ない、勝手に飛び出す喘ぎが呼吸を邪魔する。息が、出来ない。

「あ、やっ、ひぃっ、はっ、」

視界がぼやけてきて、本気でまずいと思った。体は相変わらず快感に震えている。自身はだらしなく先走りを零して、後ろはまるで喜んでいるかのように先輩を締め付ける。きゅ、と突かれる度に締め付けてしまうのが分かって、また苦しくなった。

(く、るし、)

ほんと、もう息出来ない。
陸にいるのに溺れるんじゃないかって本気で思った。

「せ、ん、ぱいっ……」
「なに?」
「もぉ……だめっ……」

苦しいです、そう声で訴える事も出来なくて、必死に背後を振り返る。微かに汗をにじませた先輩の表情は色っぽくて、そんな姿もかっこいいなって酸素の足りない意識の中思った。
けど、その口元がにいって嫌な風に歪められたのは、嫌だなって思った。

「……苦しそうな君の顔、ほんっとそそるよね。俺大好き」

だからもっと啼いてよ、そんな悪魔の囁きが聞こえた気がした。

「あんっ!んぁっ、ひぃっ、やぁぁっ!」

膨張しきった先輩自身が内壁をこすり性感帯を押し潰す。僕の自身はとっくに限界を超えていて簡単に絶頂を迎えてしまった。けれど先輩の動きは止まらない。未だにびゅくびゅくと精液を迸る自身をまた強く握り込んで扱かれる。まるで全てを絞り取るかのように。

「やっ!せん、ぱっ、やめぇ、てっ!」
「可愛いねえ帝人君、良い声だ、」
「いゃっ、あ、あぁぁっ、ひっ、はっ……っげほっ!」

息が詰まって噎せた。本当にもう駄目なんだ。息継ぎすらまともに出来なくてげほげほと咳込む。けれど前を弄る手も後ろを抉る律動も止まらない、こみ上げる喘ぎが喉を通る段階で咳に変換されて、けれど咳すらも上手く出来なくなって、ひゅーひゅーと喉が鳴った。

「あ、ぅ、はっ……っ、げほっ、かはっ」

がくがく揺すられて息も出来なくて、けど体だけは浮かされたように熱くて。気持ちよさは確かに感じているのに、同時に苦しかった。セックスって気持ち良くなるための行為なのに、何で僕ばっかりこんなに苦しいんだろう。そんな疑問もすぐに消える。思考が出来なくなってきた。酸素が脳に足りていない。

「んぁっ、ああ、せ、ん……ぱ、ゃ、だっ、や、めっ」

いきっぱなしの状態は辛かった。視界が白で塗り潰される。苦しい、熱い、辛い。やっぱり苦しい。

「帝人君、気持ちいいの?」

まだ萎えてないよ?
先輩の揶揄を含んだ声に僕は反論したくなった。こんなに苦しいのに気持ちいいだなんて、それじゃあ僕が変態みたいじゃないですか。

けれどそんな反論が僕の口から声となって出る事は当然なく、

「せっ、んぱ、……っ!」

息苦しさと気持ちよさを感じながら、ついに僕の意識は真っ白に塗り潰された。











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