そう言えば、小さい頃もこんな事があったと静雄は思い出す。
当時放送していた子供向けの番組だとか、たまに借りててきたビデオだとか、そういうものを自宅のテレビで見る時、幽は大体静雄の足の間に収まって、兄の体を背もたれ代わりにしていた。
別段苦に思った事も無く、むしろ取り立てて気にした事も無かった。当時は弟よりもテレビ番組の方に夢中だったからだ。
純粋であり無垢であり、余計な事を考えない子供の頃だったからこそ、そんな事も出来た。成長するにつれくっついてテレビを見る事も無くなったが、やはりそれを気にした事は無かった。
一種の無意識だったのだ、静雄も幽も。

そして、どうやら大人になった今でもその無意識は忘れらずに、体に染み込んでいたらしい。

静雄はホラー映画の流れるテレビから、足の間に収まって無表情にテレビを眺めている弟に視線を移した。
一緒にホラー映画を見るに至った経緯は、もう思い出せない。ただ偶然にも重なった休日を如何にして過ごすか、考えるのも億劫だったような記憶はある。出かけるよりは家に居たい、それは幽も同じだったらしく、じゃあ何か適当にDVDでも見ようという流れになったのかもしれない。
とにかく、気付けば静雄と幽は一緒にテレビの前でホラー映画を見ていて、幽は静雄の胸に体を預けていた。
まるで昔に戻ったみたいだ、と静雄は思う。

「……」

わしゃわしゃと、幽の頭を撫で回してみた。幽は対して反応を示さなかったが、こうしてのんびりゆっくりと平和ボケしたような休日の使い方も悪くないと思う。

突然、こてんと幽の頭が静雄の方に倒れてきた。どうしたのかと思って顔を覗きこめば寝ている。そんなにこのホラーつまんなかったのか、と思うが実際食い入るように見ていたのは静雄より幽だった。と言う事は、それなりに疲れていたと言う事だろう。

リモコンに手を伸ばす。もう終盤に差し掛かっていた映画を止めてテレビを切ると、静雄も大きく欠伸をした。
今日の予定はもう決まりだ。観賞会はやめにして、このまま昼寝。

もう一度わしゃわしゃと弟の頭を撫でてから、静雄も目を閉じた。










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