一緒に風呂に入ったのが最後だったか、それとも一緒に近所のプールに遊びに行ったのが最後だったか。風呂に入っていたのは静雄が小学校中学年くらいまでだったが、プールには中学に上がってからも何回かは行っていた。とすれば、やはり弟の体を見たのは中学の頃辺りが最後だろう。

(こいつ、あんま成長してねんじゃねえのか?)

ベッドの上、静雄の下でシーツを握り締めて苦悶の表情を浮かべる弟の体を見て、静雄はそんな事を思った。骨格は成長して大人のそれになりつつはあったが、筋肉量というか質量というか、とにかく体は静雄の記憶の中に居る子供の頃の幽と変わらないように感じられる。
全体的に、細いのだ。がりがりという訳ではないのだが、とにかく細い。自身の手で腰は容易に支えられるし、先程押し倒した時に掴んだ二の腕だって細かった。首も簡単に掴める。足首だって同じだ。

(細ぇ……)

自分の体が逞しく成長しただけかとも思ったが、静雄の体も筋肉は綺麗についているとは言えそれなりに標準的な体つきだ。多分。
だからこれはやはり、弟が細いだけなのだろうと確信する。

「お前、さ、」
「っ……なに……」

動きを止め、幽を見下ろす。朱色に染まった目元がちらりと自分を見上げ、静雄は弟の乱れた髪の毛をさらりと撫でた。

「ちゃんと食ってんのか」
「た、べてる……」
「にしてはよぉ、細すぎだろ」
「くっ、あ、……っ」

律動を再開させる。びくんと跳ねた弟の薄い肩を見てやっぱり細いと思った。声を噛み締めるためかシーツに歯を立てる幽の腹筋をなぞる。

「んっ……」

くすぐったいのか、指の感触さえも快感と認識しているのか、艶めいた呻きがその口から漏れた。腹筋は骨こそ浮き出てはいないが、静雄のように綺麗に割れているわけではない。全体的に見れば整った体つきと言えようが、静雄は弟の頼りない体つきに若干危機感を覚える。

(こいつ、壊れねえか……?)

大分手加減はしている。それでも幽に無理を強いているのは分かっていた。だからこそ、心配だ。自分の力は人とは違う。常軌を逸している。それを理解しているからこそ、不安だった。

「にっ、さ、ん……」
「……あ?んだよ」

不意に涙を浮かべた瞳がひたりと静雄を見上げてきた。細く今にも折ってしまえそうな腕が頭に伸ばされる。
やさしく、髪を梳かれた。

「にい、さん……」

綺麗な笑みだと思った。伊達に俳優をやっていない。テレビ越しではない、自分だけに向けられている綺麗な笑顔。
幸せそうに笑う弟は、まるで静雄に語りかけているようだった。

大丈夫だから。

そう、言われた気がした。

「辛かったら、言えよ」
「っ、んっ、ぁ、あぁっ」

ぎゅっと掻き抱いた体は、やっぱり細かった。










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